【独自】九州ヤクザ「道仁会」と「浪川会」が今月トップ交代へ《積年の対立に終止符か 抗争では死者14人》
福岡最多の指定暴力団
九州の指定暴力団である道仁会(本部・福岡県久留米市)と浪川会(本部・同県大牟田市)で、今月下旬に相次いで組織トップの交代を予定していることが「現代ビジネス」の取材でわかった。 【写真】リーマンから371億円を騙し取り、懲役15年を食らった男がヤバすぎる 浪川会は前身である九州誠道会が2006~14年に道仁会との間で苛烈な抗争を繰り広げ、一般人を含む14人の死者が出た。抗争終結後も、長らく敵対関係にあったが、異例の同時期でのトップ交代で関係改善を図る方針だという。 九州では、福岡県に全国最多の五つの指定暴力団が集中している。全国的な暴力団組員らの減少傾向や工藤会に対する警察の頂上作戦などを受けて近年は勢力図が変化しており、今年1月の福岡県警の発表では各組織の構成員(準構成員等を含む)は道仁会が280人と、工藤会の240人を抜いて初めて最多となった一方、浪川会は120人の勢力を持つ。 複数の関係者によると、道仁会がまず今月27日に現在の小林哲治・4代目会長が退き、新たに5代目会長に同会ナンバー2だった福田憲一理事長(福田組組長)が就任する。代替わりを仲介する媒酌人は住吉会傘下の有力組織が担う方向だという。 小林氏は道仁会としては新設の総裁職に就くが、福田氏に実質的な権限も移行する予定で、「数年したら総裁からも退き、正式に引退する」(関係者)という。
全国初の「特定抗争指定暴力団」
浪川会側はその2日後の今月29日に浪川政浩総裁が引退する。浪川氏は事実上のトップではあったが、組織上は2018年に会長職を梅木一馬氏に譲っていたため厳密には代替わりではない。 浪川会は元々、道仁会傘下の有力組織だった村上一家を源流とする。2006年に道仁会の代替わり人事に反発した村上一家など複数の組織が同会から独立し、九州誠道会を設立した。 翌07年に九州誠道会側が大中義久・3代目道仁会会長を射殺したことで、マシンガンや手榴弾なども使用される凄惨な抗争に発展した。同年には佐賀県武雄市で、入院中の男性が九州誠道会関係者と誤認され、道仁会系組員に射殺される事件も起きるなど、一連の抗争で市民を含めた14人が死亡した。 警察は抗争の封じ込めに躍起になった。2012年12月に改正暴対法を受けて、福岡県公安委員会が、警戒区域を定めて、区域内の事務所の出入りや5人以上で集まることの禁止などを定めた特定抗争指定暴力団に両組織を全国1例目として指定した。 抗争が続くなかで、道仁会は小林氏が、九州誠道会(2013年に浪川睦会、16年に浪川会に名称変更)は浪川氏がそれぞれトップとなり、14年に両組織は抗争終結の意思を福岡県警に伝え、特定抗争指定暴力団の指定は解除された。そこで抗争自体は一旦終結したが、道仁会と浪川会の間で遺恨は残り、トラブルはその後も続いてきた。 今回注目されるのはわずか2日ずらすだけで、ほぼ同時に対立関係にあった二つの組織のトップ交代が執り行われるという事態だ。これは何を意味するのか。後篇《山口組・高山清司氏と定例懇談「浪川会」トップ、異例の引退劇の理由》で、その背景と理由、さらに浪川氏と山口組との深い関係について詳報する。
現代ビジネス編集部