87歳現役トレーダーが乗りこなした時代の波…戦後のペットショップから雀荘経営を経て投資家に…資産10億を溶かしたバブル崩壊、阪神大震災を振り返る
87歳現役トレーダー #2
87歳現役トレーダー、藤本茂。18億円の資産を有するという茂さんだが、最初から投資家だったわけではない。ペットショップ、雀荘経営…。そこには戦後日本の経済成長に結び付いた独自の戦略があった。茂さんのこれまでの職業遍歴を聞いた。 【画像】阪神淡路大震災でほぼすべての家財が消失したが、唯一残ったものとは
ペットショップ就職がすべての始まりだった
──茂さんが歩んできた人生についてじっくりうかがっていきたいです。まず、いつ頃から株式投資をやっているんですか? 藤本茂(以下同) 初めて株を買ったのは19歳のときや。今87歳だから、今年で68年目やな。 ──株式投資をはじめたきっかけは? 高校を卒業して、神戸市の南京町のペットショップに就職したんですわ。そのペットショップにカナリアのえさを買いにきた、石野証券(現SMBC日興証券)の役員がいて、株のことをいろいろと教えてもらってたら「自分でもやってみたい」と思うようになったのがきっかけやな。 ──なるほど。投資家になる前は、ペットショップで働かれていたんですね。 動物が好きでしたからね。ペットショップのあった南京町は今でこそ有名な観光地になってるけどな、僕が働いていた1950年当時は第二次世界大戦の神戸大空襲の被害からまだ立ち直ってなくて、神戸港に来航する船員向けのバーなんかが立ち並ぶ退廃的な街だったんですよ。そんな街のペットショップでの売れ筋は、犬、オウム、カナリア。犬は富裕層に好まれて、小鳥は一般家庭で好まれてたな。 ──犬は“富の象徴”だったんですね。 そうや。他にはサルなんかも取り扱っててな。神戸港に来航する船員の人らが東アジアのボルネオなんかから小遣い稼ぎのために持ち込んで来た生き物を買い取ることが多くてなぁ。サルやオウムはその船員から買い取ってたんですよ。今では完全に違法やけどな。当時はそれが普通だったんや(笑)。 ──2024年の今から考えると、無法地帯ですね(笑)。 そうですそうです(笑)。一番印象に残ってるのはオラウータンでな。珍しいから高く売れると思って80万円で買い取ったのに、オラウータン買うてくれる個人なんて見つかんなくてな。結局、15万円で動物園にツテのある業者に売る羽目になったんや(笑)。 ──大損ですね……。 オラウータンと手ぇつないで神戸・三宮の一等地を散歩したこともあったなぁ。今は法律が厳しくなって絶対に無理なことやけどな。 ──(笑)。それからペットショップをやめて、専属投資家になったのでしょうか? いや。そのあと、まずはペットショップで独立したんや。仕事は楽しかったけど、雇われの身だと給料が安くて不満でな。 当時、同じ高卒で就職した人の初任給が1万4000円くらいだったのに対して、僕の給料は5000円ほどだったんですよ。1万円以上もらえる同世代の人が本当に羨ましくてなぁ。ペットショップでは1年だけ働いて、20歳で独立したんや。 ──20歳で独立とは早いですね。独立後は上手くいきましたか? 戦争の被害から立ち直るにつれて癒しを求める人が増え、ペットブームが起こったことも幸いして、15年ほどペットショップの経営をすることができました。 ──すごいですね。でも、15年で閉業したのはどうしてですか? 1970年頃、国鉄の神戸駅近辺の都市開発を行なうということで、評価額の約3倍の1500万円で土地を買うてくれるという話が舞い込んできてな。そのときに喜んで土地を売ったんや。今その土地には、立派なビルが建ってますよ。