【薬剤師解説】注意すべき「薬の飲み合わせ」とは? 薬と食材の関係について
薬を飲むとき、飲み合わせが気になったことはありませんか? “薬と薬”だけでなく、“薬と食材”においても、相互作用が起きて治療効果に影響が出る場合があります。今回は、注意すべき薬の飲み合わせについて薬剤師の西さんに解説していただきました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
薬を服用する前に知っておきたい、薬の相互作用とは
編集部: 薬には飲み合わせによる相互作用があると聞きましたが、本当でしょうか? 西さん: 薬の飲み合わせによって、さまざまな相互作用が起きます。その結果、過剰に薬が効きすぎるあるいは効果が弱くなることがあります。 編集部: 薬の飲み合わせによる具体的な影響を教えてください。 西さん: 相互作用によって効果が強く出るときには、血液中の薬の濃度が高くなりすぎている可能性があります。副作用も強く出るようになると治療は続けられなくなり、薬の中止や変更をしなければなりません。 編集部: 薬の飲み合わせとは、薬と何を一緒に飲むことが該当しますか? 西さん: 薬の飲み合わせは、薬と薬だけではなく薬と食材や薬と飲み物でも注意が必要です。食事に使う食材や健康食品なども注意しましょう。
代表的な注意すべき薬の飲み合わせは?
編集部: 薬と薬の注意すべき飲み合わせを具体的に教えてください。 西さん 薬の相互作用には、主に2つのタイプがあります。1つ目は薬の吸収や代謝に関わる相互作用です。ニューキノロン系抗生物質とマグネシウムなどの金属を含む制酸薬を一緒に飲むと、抗生剤の吸収が低下してしまい効果が弱くなります。また、「ワーファリン」は「CYP2C9」という代謝酵素によって代謝されるので、その代謝酵素の働きを弱める薬(抗真菌剤など)と一緒に飲むとワーファリンの効果が増強されて出血のリスクが高くなります。もう1つは、薬の作用が重なり合ったり打ち消しあったりすることで起きる相互作用です。例えば、気管支ぜんそくの薬(β2刺激薬など)と高血圧の薬(β遮断薬)を一緒に飲むと、ぜんそくの薬の効果が弱くなって症状が悪化する可能性があります。 編集部: 重複に気を付けた方がいい組み合わせはありますか? 西さん: 例えば、総合風邪薬には解熱鎮痛剤・抗アレルギー剤・咳止めなどが一緒に配合されています。熱が出たからといって総合風邪薬に加えて解熱鎮痛剤を飲むと、成分が重複してしまいます。「総合〇〇」や「〇〇配合錠」と記載されている薬には複数の薬剤が配合されている可能性があるので、成分を確認することが大切です。 編集部: 薬と食材の注意すべき飲み合わせはありますか? 西さん: 薬と食材で注意すべき組み合わせをいくつかご紹介します。納豆や青汁に含まれるビタミンKはワーファリンの作用を弱めてしまうので、ワーファリンを服用している間は納豆や青汁を控えなければなりません。また、抗生物質はカルシウムや鉄などの金属と化学反応を起こすことで吸収が妨げられます。牛乳やチーズ・ヨーグルトは抗生剤を飲んでから2時間以上あけて飲食するようにしてください。 編集部: やはり、薬を飲むときは水かぬるま湯がいいですか? 西さん: 苦い薬は好きな飲み物で飲みたくなりますが、水かぬるま湯で飲むのをおすすめします。お茶やコーヒー・紅茶にはカフェインが含まれています。実は、解熱鎮痛薬や総合風邪薬などにはカフェインが配合されている場合があり、重複するとカフェインの過剰摂取につながります。カフェインの過剰摂取は不眠、頭痛、胃のむかつきなどを引き起こす可能性もあるので、避けた方がいいでしょう。 編集部: ほかに気を付けるべき飲み物はありますか? 西さん: 薬の中には、胃酸で分解されるのを防ぐために、腸で溶けるように工夫された「腸溶錠」があります。この腸溶錠を、牛乳のような胃酸を中和させる働きがある飲み物で飲んでしまうと、胃の中で薬が溶け出してしまって充分に効果を発揮できなくなることがあります。牛乳や乳酸菌飲料・スポーツドリンクにはカルシウムが含まれているので、抗生物質や骨粗しょう症の薬と一緒に飲むと効果を弱めてしまいます。また、グレープフルーツジュースを高血圧の薬と一緒に飲むと、効果が強く出る可能性があります。加えて、ジュースやスポーツドリンクのような酸味のある飲み物と一緒に飲むと苦みを強く感じる薬もあるので、子どもに飲ませるときは注意が必要です。