Amazon、台湾に数十億ドル投資 クラウド需要に対応
米アマゾン・ドット・コムのクラウド事業、米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)がアジア地域への投資を拡大する。アマゾンのアンディ・ジャシーCEO(最高経営責任者)はAI(人工知能)分野の技術革新に注力しており、クラウドインフラへの投資を加速させている。 ■ 台湾に数十億米ドル投資 AWSはこのほど、今後15年間で台湾に数十億米ドル(数千億円)を投じ、データセンターを建設すると発表した。AWSのインフラ・リージョンを2025年初めまでに台湾で立ち上げ、台湾およびアジア太平洋地域におけるクラウドサービスへの高い需要に応えるという。 AWSインフラサービス担当副社長のプラサド・カリアナラマン氏は「台湾の新しいAWSリージョンにより、企業はコンピューティング、ストレージ、データベース、分析、機械学習(マシンラーニング)、AIなどのAWSテクノロジー活用し、アプリケーションを実行できるようになる」と説明した。 アマゾンによれば、台湾の新しいリージョンは3つのアベイラビリティーゾーン(AZ)で構成される。リージョンとは、複数のデータセンターを1つのまとまりとして管理・運用するエリアである。一方、アベイラビリティーゾーンは、リージョン内にあるさらに小さな単位でデータセンターを分けるエリア。同じリージョン内にありながら、独立した電力供給網や冷却設備などを備え、可用性と冗長性の向上を図っている。 「この新リージョンにより、台湾にコンテンツを保管したい顧客はそれが可能になる。開発者やスタートアップ、非営利団体のほか、教育・エンターテインメント・金融サービスといった企業・団体が台湾にあるデータセンターからエンドユーザーにサービスを提供できるようになる」とアマゾンは説明している。
■ 収益性の高いAWS、設備投資拡大へ アマゾンは現在、世界中に計33のリージョンを持ち、アベイラビリティーゾーンの数は計105に上る。AWSは、アマゾンの中で最も収益性の高い部門である。2024年1~3月期のAWS事業売上高は前年同期比17%増の250億3700万ドル(約3兆9000億円)だった。AWSの営業利益は前年同期比84%増の94億2100万ドル(約1兆5000億円)に達した。同事業の営業利益はアマゾン全体の7割を占める。 米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によると、24年1~3月期の設備投資額は140億ドル(約2兆2000億円)だった。同社は今後、AWSインフラと生成AIの投資を拡大していく方針で、同四半期の設備投資額は24年の各四半期における最低水準になるとの見通しを示した。 AWSは24年5月、28年までにシンガポールで120億シンガポールドル(約1兆4000億円)を追加投資すると発表した。日本では27年までに150億ドル(約2兆4000億円)を投じる計画だ。マレーシアでは37年までに60億ドル(約9400億円)超を投資し、新しいデータセンターを開設する。タイでは15年かけて50億ドル(約7900億円)を投じる。AWSは21年12月にインドネシアのジャカルタでデータセンターを開設している。 ■ マイクロソフトとグーグルもアジアに注力 米調査会社のシナジー・リサーチ・グループによると、24年1~3月期における世界クラウドインフラ市場でAWSは31%のシェアを獲得し、首位だった。これに米マイクロソフトと米グーグルが、それぞれ25%と11%のシェアで続いた。 マイクロソフトとグーグルもアジア地域を重視している。マイクロソフトは先ごろ、マレーシアやタイ、インドネシアなどでクラウド・データセンター・AI分野の投資を増やすと明らかにした。グーグルはマレーシアでデータセンターを建設するために20億ドル(約3100億円)を投じると発表した。グーグルがマレーシアにデータセンターを設置するのは初めてとなる。
小久保 重信