大橋ジム期待のミライモンスター2人が特例措置でプロテスト合格も約40人が受験できず危機的状況…井上尚弥も不透明
福地氏によると、アマチュア実績などのないC級の受験希望者が、現在約40人ほどいてプロテストを行えず待機している状況にあるという。これだけの人数はジムでのプロテストではさばききれない。 「40人もの人数のプロテストが遅れると、プロとしてのデビューができないわけだから、いずれツケが回ってくる。ただでさえ毎年プロテストの受験者、合格者が減っている状況。1日でも早く事態が収束に向かってくれないと大変ですよ」 プロテストの責任者の福地氏も悲痛な声を上げた。 2019年度で見ると2月と10月以外は、毎月、全国各地で男女のプロテストが行われ、後楽園ホールでは計9度、実施された。男子は408人、女子は37人が合格しているが、毎年、減少傾向にあるという。フィットネスジムではなく、わざわざプロジムを選んで入門してくる人の多くが、プロライセンスの取得を目標にしている。プロテストを受験できないことでモチベーションがダウンして、ジムを離れる会員が増えたり、プロデビュー計画が狂うとなると大きな打撃。年々、閉鎖ジムが増え、危機的状況にあるプロボクシング界にとってのダメージはあまりにも大きい。 その影響は日本ボクシング界のピラミッドの底辺にだけ出ているわけではない。 頂点に鎮座する同ジム所属のWBA世界バンタム級スーパー、IBF世界同級王者、井上尚弥(26)の3団体統一戦の先行きも不透明になっている。井上は4月25日に米国ラスベガスでWBO世界同級王者のジョンリル・カシメロ(31、フィリピン)と3団体統一戦を戦う予定だが、米国が新型コロナの防御策として日本を含む数か国を入国拒否対象にすることを検討し始めたとの報道があり、大橋会長は、「どうなるかわからない。そもそも試合が米国でやれるのかどうかも」と不安を口にした。
当初、井上は試合の3週間前に渡米する予定を組んでいた。新型コロナの拡大を受け、そのスケジュールを早め、米国が強行措置を取る前に渡米するというプランも浮上していたが、「まだビザが下りていない。これまでも、渡米の数日前に発給されるものだったが、今後の動きを見てみないことには何も決められない」と大橋会長も困惑している。 「ただ我々は100%試合が予定通りにあるという前提で準備している。尚弥の状態もいい」。大橋会長は、今やれることに最善を尽くすことを約束した。 暗いニュースばかりが目立つボクシング界で大橋会長が「将来間違いなく世界王者になれるスター候補」と期待を寄せる2人の大型ホープのプロテスト合格は明るい話題。松本も「こういう中で、ちょっとでも光になれればいいと思った」と、プロらしいコメントを残した。 2人は、5月28日に後楽園ホールでプロデビュー戦が予定されており、「一発も触らせずに会場を沸かせておいてKOで勝つ」(松本)、「スピードと距離感はトップでも通用する。勝負できるときに勝負してアピールしたい。もらわずに当てたい」(中垣)と、それぞれがデビュー戦のイメージを語った。 「同じジム内にライバルがいることで強くなれる」という大橋会長の考えでは、2人をデビュー後も、同じスケジュールでリングに立たせ、内容、結果で勝る方が先に世界挑戦のチャンスを手にすることになるという。