広島県内外の高校でモデルとなっている世羅高のスマホ相談会

　広島県世羅町と世羅高（同町本郷）が2022年から続けるお年寄り向けの無料スマートフォン相談会が、先進事例として県内外の高校に広がっている。生徒が先生役として高齢者のデジタル格差の解消を担い、高齢者を狙う特殊詐欺の啓発にもつなげる取り組み。民間のスマホ教室が不足しがちな各地の中山間地域で、新たなモデルとなっている。 世羅高は陸上部でも有名 　今月中旬、同校であった相談会に、地域のお年寄り15人が集まった。介護などを学ぶ生活福祉科の2、3年生が一対一で対応。参加者は交流サイト（SNS）のLINE（ライン）や地図アプリの使い方などを聞き、メモを取っていた。近国佐恵子さん（84）は「年寄りでも挑戦したい気持ちがある。優しく教えてもらい、来て良かった」と笑顔を見せた。 　相談会はこれまでに計6度開き、参加者は延べ100人を超えた。3年の根岸乃瑠（のいる）さん（17）は「ありがとうと言われることがうれしい。やりがいがある」とほほ笑む。 　同町と連携協定を結ぶソフトバンク（東京）が相談会をサポートする。世羅署と連携し、スマホを介して高齢者たちを狙う犯罪の啓発も実践。ソフトバンクグループの人型ロボット「Pepper（ペッパー）」を会場に持ち込み、現金をATMなどで振り込ませる特殊詐欺や、増加するSNS型投資詐欺の手口を分かりやすく紹介する。 　取り組みは同社を通じて広がりを見せ、昨秋に三次青陵高（三次市）が導入。今月は出雲商業高（出雲市）や矢上高（島根県邑南町）でも実施した。今後、四国や東北の高校でも予定されているという。 　同社CSR本部の瀧川武参与は「中山間地域でのデジタルの普及は、今まで民間の手が届かなかった」と説明。自治体や参加者に費用負担がない手軽さに加え、生徒は社会問題に取り組む経験や地域への関心を高められることが、拡大の要因となっているという。 　世羅高の大島裕校長は「さらに幅広い地域課題にアプローチできる相談会になるよう、生徒たちに何ができるかを考えさせたい」と話す。