景気低迷でも「自由化」できない中国共産党のジレンマ
外交評論家で内閣官房参与の宮家邦彦が2月9日、ニッポン放送「小永井一歩のOK! Cozy up!」に出演。低迷する中国経済について解説した。 【写真】一堂に会し春節を迎える習近平氏ら中国共産党と国家の指導者
2月10日から春節も中国の景気は低迷
中国では2月10日の春節(旧正月)前後に帰省や旅行が盛んになるが、景気は低迷しているようだ。中国国家統計局が8日に発表した1月の消費者物価指数は、前年同月比0.8%下落。4ヵ月連続のマイナスで、下落幅は2009年9月以来、14年4ヵ月ぶりの大きさ。中国では不動産不況を背景に消費が低迷し、物価が上がりにくい状況が続いている。 小永井)なかでも食品価格が5.9%下落しています。 宮家)コロナが明けて、中国経済はV字回復するという期待が市場では高かったようです。でも、現地では思ったように景気が回復しない。何故かと思っていたら、先日、中国に住む友人と話す機会があったのですが、「なるほど」と思ったことがあります。確かに不動産不況やデフレ等々問題はあるけれど、コロナ禍の最中はみんな経済活動を自粛していたのかと思ったら、実は中国の一般庶民も決して消費しなかったわけではなく、かなりお金を使っていたのだそうです。
途上国の経済から先進国型に転換する曲がり角の中国
宮家)電気自動車ブームなどもあって消費はそれなりにあった。しかも、コロナ禍中はみんな食べものを買い込み、いつ何が起こるかわからないから色々備蓄もしていた。そこでコロナ禍が明けたら、今は「さて何を買おうか」という感じらしいです。そういう感覚は現地に住んでいる人でないとわからないと思い、なるほどなと思いました。それに加えて、不動産バブルが弾けた。若い人の失業率がとても高く、しかも中国社会は高齢化が進んでいます。1990年代以降の日本のようなバランスシート不況にもなっています。日本でもありましたが、いま中国はデフレの始まり、一種の曲がり角なのです。
国民1人当たりのGDPが1万ドルを超えるためには内需拡大、国有企業の改革、規制緩和等々のイノベーションが必要
宮家)中国経済も当然、途上国の経済から先進国型に転換しなくてはいけない。「中所得国の罠」という言葉がありますが、1人当たりのGDPが1万ドルを超えるか超えないかになると、途上国の経済は壁に突き当たります。その壁をぶち抜くためには、例えば内需拡大、国有企業の改革、規制緩和、イノベーションなどが必要になります。 小永井)イノベーション。 宮家)日本も韓国も台湾も、みんなそれで1人当たりGDP1万ドルの所得を超えていったわけです。もちろん、いまの中国だと沿岸の方では2~3万ドルのところもあるけれど、基本的には1万ドル前後ですよね。