今週末、41年ぶりにラスベガスGPが復活。かつてシーザーズパレスを舞台に開催されていたグランプリは、単調なコースレイアウトで不評だった?
今週末、アメリカ・ラスベガスに久々にF1が帰ってくる。F1ラスベガスGPである。 【サーキット解説】F1ラスベガスGPのサーキットを、F1 23のオンボード映像でチェック! 0 ラスベガスでは、1981年と1982年の2回にわたって、F1が開催されたことがある。当初は2023年と同じように公道を封鎖して市街地サーキットを作ろうという計画もあったようだが不可能だったことがわかり、巨大ホテル”シーザーズパレス”の駐車場を使ったサーキットが特設されることになった。 このレースの正式名称は”シーザーズパレス・グランプリ”だが、ラスベガスGPと呼ばれることもある。 当時も今のように、アメリカで複数のグランプリが開催されていた。1982年は第2戦アメリカ西GPがロングビーチ市街地サーキットで、第7戦デトロイトGPがデトロイト市街地コースで、そして第16戦(最終戦)シーザーズパレスGPがシーザーズパレスでそれぞれ開催された……つまり2023年は、歴史上2回目となるアメリカ国内年間3戦となるシーズンである。 ただシーザーズパレスの駐車場を舞台としたサーキットは、出来の良いモノではなかった。駐車場にコンクリートウォールを並べ、ヘアピンとヘアピンを折り返すようなレイアウト。高速コーナーはなく、高低差もなし。せっかくラスベガスで開催されているのに、ラスベガスらしい華やかさも感じられなかった。 シーザーズパレスGPは、2回の開催のみで終了となった。グランプリ開催が、シーザーズパレス・ホテルの経営を大きく圧迫してしまうことになったわけだ。 しかしいずれのグランプリも、チャンピオンが決する重要なレースとなった。 1981年のレースで優勝したのは前年チャンピオンのアラン・ジョーンズ(ウイリアムズ)だったが、5位でフィニッシュしたネルソン・ピケ(ブラバム)がカルロス・ロイテマン(ウイリアムズ)を逆転してチャンピオンを手にした。ピケにとってはこれが最初のチャンピオン獲得であった。 なおこのレースは酷暑の中での開催となり、ピケは体力を消耗。チェッカーを受けた時には気を失う寸前であり、マーシャルらに抱えられてマシンから降りることになった。2023年のラズベガスGPは極寒の中での開催となると言われており、それとは真逆の展開である。 1982年のシーザーズパレスGPでは、ティレルのミケーレ・アルボレートが勝利を手にした一方で、5位入賞を果たしたケケ・ロズベルグ(ウイリアムズ)がチャンピオンに輝いた。 このシーズン前半には、当時フェラーリのドライバーだったジル・ビルヌーブが事故死。チームメイトのティディエ・ピローニも、シーズン終盤のドイツGPで大事故を喫して大怪我。ドライバー生命を絶たれた。 事故を起こした時、ピローニはドライバーズランキング首位に立っていたが、最終的にはロズベルグに抜かれ、ランキング2位となっている。 前述の通りこの1982年を最後にF1のシーザーズパレスGPは開催されなくなった。観客動員数が伸びなかったのだ。 しかし83年と84年には、インディカーのレースが同じ駐車場で”シーザーズパレス・グランプリ”として開催された。ただレイアウトは、ヘアピンを多用するF1と同じモノではなく、駐車場の外周部を使ったほぼオーバルというモノ。ほとんど全開、コーナーはブラインドで先が見えず、通常のオーバルとは異なりコーナーにバンクはない。しかしこのレイアウトはドライバーたちから「エキサイティングだ!」と高評価が下された。 ただこのインディカーのレースも2年で終了。駐車場にはホテルが増築され、カジノやショッピングセンターが建てられた。 そんなラスベガスに、41年ぶりに今年F1が帰ってくる。今度は公道を大々的に使用し、ラスベガスのメインストリートとも言える”ストリップ”を20台のF1マシンが全開で駆け抜ける。しかもナイトレースとして行なわれるため、煌びやかなカジノのネオンが、サーキットを照らすことになるだろう。全長は6.12km、かつてシーザーズパレスの駐車場を舞台としたサーキットのほぼ倍の長さだ。 ただ時期は11月中旬、砂漠地域のため夜の気温は下がり(ナイトレースとしての開催だ)、極寒のグランプリとなることが予想されている。ドライバーにとってもマシンにとっても、そして特にタイヤにとっても厳しいグランプリとなるに違いない。 予報では、決勝レースの時間帯の気温は10度を下回る可能性もあるとされている。10度以下と言えば、かつてカタルニア・サーキットで行なわれていたプレシーズンテストと同じようなコンディションである(ちなみにカタルニアでのプレシーズンテストでは雪が降ったことがある……それに比べれば暖かいか)。2020年にニュルブルクリンクで行なわれたアイフェルGPも、昼間ながら10度前後のコンディションで行なわれた。 なお今回の新しいラスベガスGPのコースは、かつてグランプリを開催したシーザーズパレスの敷地の真横を通ることになっている。
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