家族で暮らした島の思い出、70年ぶり再訪 愛媛の釣島灯台、重要文化財に指定
瀬戸内海に浮かぶ釣島(つるしま、松山市)にあり、国内最初期の洋式灯台の一つとして1873年に建てられた釣島灯台が今年1月、国の重要文化財に指定された。父が1949~54年に「灯台守」を務め、家族で島に住んだ大阪府高槻市の高山征雄さん(80)は、重文指定のニュースを知って約70年ぶりに再訪。「戦後間もなく貧しい時代だったが、島の人の温かみに触れた得難い経験だった」と懐かしんだ。 釣島灯台は高さ約10メートルで、「日本灯台の父」として知られる英国人技師リチャード・ヘンリー・ブラントンの設計で建設。63年に無人化されたが、難所とされる釣島海峡を行き交う船の安全を守り続けている。隣接する旧官舎なども重文に指定された。 当時、父の友祥さんら家族4人で官舎に住んでいた高山さんは、今年2月に兄の保さん(82)と島を訪問。記憶の中の灯台は見上げるように大きかったというが、改めて灯台を見て「思っていたより小さいと感じた」と振り返った。
ただ、官舎の中を見学するうちに「この部屋でこうじ菌を作って料理に使っていたな」と幼い頃の思い出がよみがえってきた。秋に五穀豊穣を祝う祭りに参加したり、正月に灯台職員と百人一首を楽しんだりもしたという。高山さんは「重要文化財に住んでいたという貴重な経験を誇らしく思う」と感慨深そうに話した。