リチャード・リンクレイター監督最新作『ヒットマン』メイキング動画でグレン・パウエルが“偽の殺し屋”に変身
『スクール・オブ・ロック』(03)、『6歳のボクが、大人になるまで。』(14)、「ビフォア」シリーズで知られるリチャード・リンクレイターの監督最新作『ヒットマン』(9月13日公開)。このたび、本作の場面写真やメイキング映像が解禁された。 【写真を見る】グレン・パウエル扮する“偽の殺し屋”が七変化 本作は1990年代に偽の殺し屋として警察のおとり捜査に協力していた人物の実話にインスパイアされたクライム・コメディ。いまハリウッドでスターの階段を駆け上がっている『トップガン マーヴェリック』(22)、『ツイスターズ』(公開中)のグレン・パウエルがこの実話の存在を知り、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』(16)でも組んだリンクレイターへ電話をかけたことからこの企画はスタート。そこからリンクレイターとパウエルによる共同の脚本制作が始まった。リンクレイターの集大成ともいうべき魅力がふんだんに詰まった本作は、2023年ヴェネツィア国際映画祭でのプレミア上映をはじめ、サンダンス映画祭、トロント国際映画祭など数々の映画祭で上映され、映画批評を集積、集計するサイト「Rotten Tomatoes」でも、批評家のスコアが98%(5月28日時点)と好評を博している。 普段は冴えない大学教授でありながら、おとり捜査で偽の殺し屋に扮し殺しの依頼をしてくる「依頼人」たちを次々と逮捕へ導いていくゲイリーをJ・J・エイブラムス、エドガー・ライトというハリウッドきってのヒットメーカーたちからオファーが殺到しているパウエルが演じた。パウエルは、リンクレイターと共著の脚本で早くも2025年のオスカー候補と目されているほか、7月3日に発表された第7回アストラ・ミッドシーズン映画賞において、4部門でノミネート、主演男優賞を受賞した。そして『モービウス』(20)でヒロイン役を演じたアドリア・アルホナが、夫の殺害を依頼するも、ゲイリー扮する偽の殺し屋ロンに惹かれ、恋に落ちる魅力的な女性マディソンを演じる。 このたびパウエル扮するゲイリーが偽のヒットマンに扮した七変化画像とキャラクターが作られる過程を映したメイキング映像が解禁された。本作のモデルとなったゲイリー・ジョンソンは、地方検事局で働きながら講師として地元のコミュニティカレッジで心理学などを教えていた。そんなゲイリーは、1990年頃から偽の殺し屋として警察に協力しはじめ70人以上を逮捕に導いたスゴ腕潜入捜査官でもある。劇中でもさまざまな個性的なヒットマンに扮しているのだが、このキャラクター作りは主にパウエル、ヘアメイク担当のタラ・クーパー、そして衣装担当ジュリアナ・ホフパワーによる壮大な共同作業によって作られた。当初は20人ほどのキャラクターが作られたという。 パウエルは「クレイジーなプロセスだった。人を殺したいと思う依頼人に対してゲイリーがどうペルソナを被るかは、依頼人がなにを求めているかによって変わる。依頼人が少年の場合、ヒットマンのキャラクターは屈強そうなSFから出てきたアクションヒーローのようにした。ヒットマンたちの人格は直前までリック(リンクレイター)には見せなかった。ヘアメイクのテストも見せなかった。だから毎回、私がヒットマン姿で控え室から出て行く時はいつも楽しかった。色々なキャラクターを噛み砕き、カメレオンのようでなければならない。こういうキャラクターを演じるのはプレッシャーもあるけど、俳優にとっての夢でもある」とそのプロセスを語る。 さらに、映像では「ゲイリー・ジョンソンが使いうるレベルのリアルで違和感のない道具やテクニックを考える必要があった」と拘りを教えてくれた。さまざまなキャラクターの特徴や、話し方、趣味、嗜好まで詳細なペルソナが準備された。たとえばグレンが演じた殺し屋の1人、ディーンというキャラクターは、赤毛にそばかす。眉毛がなくて、歯並びがおかしい。ソシオパスの連続殺人鬼で、悪夢のようなキャラクターという設定が作れられた。眉毛や歯並び、瞼、髪型など少しの変化で顔の印象がガラッと変わる。解禁された映像と写真を見ると全てが同じ人とは思えないクオリティの高さとパウエルの演技力を垣間見ることが出来る。そしてそのすべての作業が心から楽しんで遂行されたことが伺える映像となっている。リンクレイターは「私たちはゲイリーの変装に全力を注いだ。グレンとタラは少し楽しみすぎたかもしれないが、とても楽しかった。私はこの2人を称賛したい」と賛辞を送っている。 またあわせて公開されている場面写真には、パウエル演じるゲイリーの変身ぶりが収められていて、映画本編への期待も高まる。多くの映画ファンから支持されるリンクレイターがパウエルとタッグを組んだ本作。軽快なテンポで活写されるリンクレイターワールドをスクリーンで堪能したい。 文/スズキヒロシ