撮影は「窓灯り鑑賞日」に 南砺・相倉合掌造り集落
●観光公害抑止へ設定 南砺市の世界遺産・相倉合掌造り集落の保存財団は29日、夜に合掌家屋の窓明かりが浮かぶ景観を撮影できる「窓灯(あか)り鑑賞日」を初めて設けた。集落はライトアップの日をのぞき宿泊客以外の立ち入りは午後5時までと制限しているが、撮影で夕暮れ以降も訪れるマナー違反が絶えない。あえて鑑賞日を設定することでルール順守を促して「オーバーツーリズム(観光公害)」を抑止し、住民の生活と観光振興を両立させる。 【写真】住民の生活空間に入らないよう設置された看板 保存財団によると、近年はカメラ機能に優れたスマートフォンやSNS(交流サイト)の普及で、だれでも気軽に夜景を撮影してネット上に投稿できるようになり、マナー違反が増えたとみられる。財団では鑑賞日を設けることで、他の日は立ち入りできないと周知することにした。 29日の初回は、午後5時~同8時まで決められたエリアで、合掌家屋の窓明かりが水田に映り込む「逆さ合掌」の撮影や鑑賞ができるようにした。ライトアップの日以外にも撮影できるとあって、大勢の写真愛好者が訪れた。 写真クラブを主宰する写真家安念余志子さん(砺波市鷹栖出)は、「会員にはマナーを守るよう厳しく、伝えている。自然の光の風景を撮りたいのが愛好者の心情であり、いいアイデアだ」と歓迎した。 岐阜県郡上市から訪れた写真愛好者の男性(77)は「初めて五箇山に訪れたが、集落が住民の生活空間で夕方以降入れないことを知らなかった。鑑賞日は事情を理解する機会になった」と話した。 鑑賞日でも住民が暮らすエリアは夕方以降の立ち入りは禁止として看板を設置した。新入社員研修で、相倉で農作業体験を行っている人材サービス業「クイック」(大阪市)の社員約30人が警備ボランティアを担当した。 「窓灯り鑑賞日」は6月5日と来年1月8、15、22、29日にも設ける。保存財団の中島仁司事務局長(44)は「観光客や写真愛好者の反応をみて、来年度の実施についても検討したい」と話した。