<社会インフラを行く!>東京の海の玄関口「晴海客船ターミナル」
東京湾に位置する「晴海埠頭(ふとう)」は、大都市・東京の海の玄関口であり、そのほぼ中央に「晴海客船ターミナル」が鎮座する。晴海埠頭は、また、夜景がことのほか美しい。レインボーブリッジや東京タワーを遠くに望み、絶景夜景デートスポットとしても紹介されることが多い。夜ともなると弓状に配置されたメタリックな街灯が、足下のモザイクのような幾何学模様をぼんやりと照らしだす。 外国との自由貿易を目的に横浜港が開港したのは1859年であったが、東京港が国際貿易港としての開港したのは1941年と歴史は新しい。この「晴海客船ターミナル」は、開港50周年を迎えた1991年に誕生し、現在では豪華客船やクルーズ船舶が接岸する。ピラミッド型のガラス張りターミナル構造物は、東京湾の新たな歴史を記念し、象徴する構造物なのである。 東京都の資料によると、東京湾の埠頭の建設が急がれたのは、1923年の関東大震災がきっかけである。大震災により陸上交通網が崩壊し、海路である東京港の重要性が認識された。開港からほどなく終戦を迎え連合軍により接収されたが、高度経済成長期においてコンテナ輸送に対応した東京港は国際貿易港として飛躍した。 航空機で世界を短時間行き来できる時代ではあるが、海を望み、海の旅に思いを馳せるのも格別な趣きがある。時折、接岸する豪華客船や帆船がその想像を膨らませてくれる。そして、この美しい夜景とともに、東京湾の歴史と海の広大さを感じとりたいものである。 (監修:吉川弘道・東京都市大学教授)