【データで選出5月月間MVP】近藤はわずか1ヶ月でWAR2.1を記録。巨人の吉川&坂本コンビは守備面で圧倒的存在感を発揮
圧倒的守備範囲で巨人を支える吉川。三塁に回っても名手の坂本
守備評価には同じイニングを守った平均的な同ポジション選手と比較してどれだけ失点を防いだかを表すUZR(Ultimate Zone Rating)を使用する。しかしUZRは同ポジションの選手との守備を比較する指標であるため、異なるポジションの選手を比較する際はポジション間の補正を行う必要がある。一般的に高い守備力、もしくは独自性のあるスキルを要するポジション(遊撃手や二塁手、捕手など)を守った選手はプラスに補正をかけ、その逆のポジション(一塁手や左翼手など)はマイナスの補正をかけるといった具合だ。この守備位置補正をUZRに加えたものが守備貢献となる。 守備で12球団トップの貢献を見せたのは、総合でもトップとなった吉川だ。5月は平均的な選手に比べ守備で6.3点も多く失点を防いだと評価されている。5月30日のソフトバンク戦では普通なら一塁手が処理するような一二塁間の打球を回り込んで処理するなど、広い守備範囲が光った。 またランキング外ではあるが同じ巨人の坂本勇人も守備で4.4点を防いだと評価されている。これは吉川に次ぐ値である。今季は開幕から三塁手として出場している坂本。コンバート後も遊撃時代と変わらず好守備を見せているようだ。巨人の内野は鉄壁である。
月間最多勝の床田がまさかのランク外。質と量を兼ね備えた早川が12球団トップ
投手のWARは投球の質と量両面でどれだけ貢献したかから求める。質は「奪三振」、「与四死球」、「被本塁打」、「ゴロかフライかライナーといった打たれた打球の種別」、量は「どれだけ多くの機会をこなしたか」によって決まり、そこから平均的な投手と比較しどれだけ多くの失点を防いだかを算出。それが何勝分に値するのか換算したものが投手のWARとなる。 投手部門でパ・リーグは早川隆久(楽天)、セ・リーグでは才木浩人(阪神)がそれぞれ1.18、0.81とトップのWARを記録した。 5月のセ・リーグで目立ったのは4勝0敗、防御率0.94とインパクトのある成績を残した床田寛樹(広島)だ。しかし本企画ではセ・リーグ5指の中にも入っていない。これには奪三振の少なさが影響している。床田の奪三振割合(奪三振/打者)は10.1%。リーグ平均(20%弱)に比べてもかなり三振がとれておらず、バックの守備に頼ってアウトをとることが多かったようだ。自責点こそ少ないものの、もっと失点していてもおかしくない内容だったとセイバーメトリクスの指標は語っている。 かわりにセ・リーグでトップとなったのは才木。奪三振割合こそリーグ平均とそう変わらない19.0%だが、リーグ平均が8%ほどとなる与四球割合(与四球/打者)で4.8%と優秀な数値を記録。本塁打も1本も浴びずに5月を走りきった。 パ・リーグの早川は奪三振割合が23.8%、与四球割合がわずか2.8%。この2つの指標で極めて優秀な値を残したうえ、パ・リーグトップの36.2イニングを消化した。単純に投球の質が優れていただけでなく、それを数多くの機会でこなしたことで12球団最高の値をマークしている。チームの失点を多く防ぐには優れた内容だけでなく、多くのイニングを投げることも求められるのだ。 DELTA(@Deltagraphs)http://deltagraphs.co.jp/ 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~7 』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。
ベースボールチャンネル編集部