社会党・浅沼委員長刺殺 右翼テロ頻発 警視庁150年 46/150
「60年安保」の余韻も冷めやらぬ昭和35年10月12日、日比谷公会堂(東京都千代田区)で行われた自民党、社会党、民社党の立会演説会で、浅沼稲次郎・社会党委員長が刺殺された。 その場で取り押さえられた犯人は17歳の少年。13日付『産経新聞』によると、右翼団体に入った34年以降、公務執行妨害容疑などで9回にわたり逮捕されていたという。 同紙によれば警視庁は事件当日、会場に右翼が集まることを把握。丸の内署、機動隊に加え、公安部、警備部合わせて150人ほどで警戒に当たっていた。 演説が始まると、演壇に向かって左側で右翼関係者らがやじを飛ばしたり、ビラをまいたりした上、檀上に上がろうとた4人が逮捕される騒動に。警戒の目がそちらに向いた「空白」をぬい、少年は演壇右側から駆け上がり、犯行に及んだ。 騒いだ右翼団体と少年は連動していたわけではなく、事件は少年の単独犯だったとされる。しかし、最大野党のトップが聴衆の目の前で殺害された事実は、海外メディアでも報じられた。 この時期、労働運動、学生運動が大きな高まりを見せたことで、右翼の中で日本の共産主義化に対する危機感が高まっていたとされる。浅沼委員長殺害だけでなく、岸信介首相襲撃など右翼によるテロ事件が頻発。学生運動も次第に過激化。高度経済成長期の警察は、新たな難題と対峙することになる。(橋本昌宗)