12月に都内初、公道で自動運転車実証実験 公共交通充実の杉並区なぜ協力?
3D地図は区民向け地図アプリにも反映、「防災情報」リアルタイムで共有
今回の無人運転の実証実験で得られたデータなどは自動車メーカーや研究者にフィードバックされ、それらは今後の自動運転技術の向上に役立てられることになっています。 わざわざ杉並区が協力するのに、今回の実験では区民に還元されるものがないようにも思えます。実験で得られたデータを、区が運行しているコミュニティバス「すぎ丸」などに活かされることはないのでしょうか? 「今回の実験だけで、すぐに杉並区で運行しているコミュニティバス“すぎ丸”を自動運転に切り替えることは難しいでしょう。今回の実験は、あくまでも杉並区が技術の向上に一役買うという社会貢献です」(同) 杉並区は、手間暇かけて3Dの地図データを作成・収集したのですから、積極的に活用しなければ宝の持ち腐れになってしまいます。今回の自動運転への協力もそうですが、杉並区では区民に還元する地図のデータ活用も始めています。それが、防災時にも役立つ“すぎナビ”という地図アプリです。 もともと“すぎナビ”は、都市計画や道路工事といった地図・地形に関する情報を提供するシステムでしたが、区民からの情報をオープンデータとして共有するようになり、安全な帰宅経路や避難所、トイレ・給水といった情報をリアルタイムで提供するアプリとして進化を遂げています。 一見すると、地図と行政は縁の遠い関係のように思えますが、国土交通省は2014年に「地域づくり活動に地図やGIS(=Geographic Information System:地理情報システム)を使おう」と呼び掛けています。 そうしたことから、今後は多くの自治体で3D地図やデジタル地図を活用する取り組みが進むでしょう。早くから、3D地図を活用していた杉並区には、先見の明があったといえそうです。 小川裕夫=フリーランスライター