日系監督作品が健闘、自己観察や受容などテーマ トロント映画祭
Atsuko Kitayama [トロント 12日 ロイター] - カナダで開催中の第49回トロント国際映画祭(TIFF)で、世界の映画祭で高い評価を受けた43作品が肩を並べるセンターピース部門に奥山大史監督の「ぼくのお日さま」が選出され、北米プレミア上映された。 同作品は、雪国を舞台にスケートの練習をする少女とその少女に想いを寄せる少年、選手の夢をあきらめたコーチの3人が繰り広げる冬の恋物語。 奥山氏はロイターに対し「ひと冬の少年の成長を描きたいと思った」と述べた。 その上で「とても余白が多い映画」と表現。「観た人が自由にその余白を埋めて、その積み重ねによって『これは自分のための映画なのかもしれない』と思ってくれれば」と語った。 5月に仏カンヌ国際映画祭で斬新な作品を集めた「ある視点」部門にも選出された。 TIFFのコンペティション部門に当たるプラットフォーム部門には、日系フランス人の嘉村荒野監督の「ソクチョの冬」が出品された。 主人公は、フランス人の父と韓国人の母を持ち北朝鮮との軍事境界線に近いソクチョで暮らす若い女性。フランス人男性との出会いをきっかけに、会ったことのない父親への複雑な想いに向き合い、自分のアイデンティーを模索する姿を描く。 嘉村氏も幼いころから日仏いずれの国でも「外国人」と感じ、自分自身をどう定義するか悩み「自分の国がないような気がしていた」という。「自分がビトゥイーン(真ん中)という立場にいてもいいのだと、自分のバックグランドを誰かに認めてもらう必要がないと受け入れるのに時間がかかった」と述べた。 今回の長編デビュー作に込めたメッセージは「自己受容」だ。「ありのままの自分や自分のバックグラウンドを受け入れ、自分ともっとコミュニケーションを取ろう」と述べた。 センターピース部門には、空音央監督の「HAPPYEND」も出品された。近未来の東京を舞台に、幼なじみの高校生2人の友情の揺れ動きや心の葛藤、卒業を間近に変わっていく人間模様を描く。 今月開催の伊ベネチア国際映画祭では、斬新な作品を集めたオリゾンティ部門に選出された。 空氏は、父で23年に逝去した音楽家の坂本龍一さんの最後の演奏を記録したドキュメンタリー映画「Ryuichi Sakamoto | Opus」を監督したことでも知られる。