愛着ある沖縄で、自身の成長を示した宇都宮の佐々宜央HC「トム・ホーバスの下でチーム作りを経験したことが勉強になっている」
「よりチームとして戦っていくための組織作りをすごく意識しています」
この勝利で宇都宮は24勝7敗としている。一昨年のリーグ制覇から一転し、チャンピオンシップ出場を逃した昨シーズンからの見事なV字回復で、ポストシーズン進出は確実な状況だ。エドワーズが長期離脱している今、昨シーズンからの戦力の上積みはニュービルのみだ。もちろんニュービルはリーグ屈指のスコアラーでありクラッチシューターで、彼の存在は大きい。とはいえ、たった1人ですべてが変わるほど勝負の世界は簡単ではない。チーム全体のステップアップがあるからこその復活であり、そこには佐々ヘッドコーチ自身の成長も含まれる。 本人も昨シーズンと今シーズンにおける采配やチームマネジメントの手法に変化はあると認める。それはアシスタントコーチとして参加している、日本代表の活動が大きく影響していると明かす。「幸運なことにワールドカップを経験させてもらえました。そしてトム・ホーバスの下でチーム作りを経験したことが非常に勉強になっていて、有効に使えているところはあります。戦略、戦術の部分だけでなく、よりチームとして戦っていくための組織作りをすごく意識しています。いろいろありますが、単純に言うと、一人ひとりの役割をはっきりさせている。リーダーシップの重要性、信じる力をチームに伝えていっています」 特に対話の部分をより重視するようになったと佐々ヘッドコーチは言う。「チーム作りのためにどういうコミュニケーションを取るのか。前はチームミーティングが多かったですが、バスケットボールは1チームで14名くらいですし、個別に話すことを意識しています。それによって、それぞれにどの部分で、どういうリーダーシップを発揮してほしいのか明確になってくる。コミュニケーションが一番大きいです」 このようにアプローチの方法は変えたが、一方で佐々ヘッドコーチがチーム作りの哲学において大事にしている部分は変わらない。同級生で、付き合いが誰よりも長い竹内が「僕が感じている部分ですけど、彼は背伸びをしない。自分のスタンスを持っていて、一本の芯がブレないコーチだと思います」と語るように、根幹となる部分が同じだからこそ、選手たちも変化を受け入れることができる。 自身のコーチングについて「去年とは全く違うなという自覚はあります」と語るが、そこに満足感は全くない。「あまり見られないですけど(笑)、まだ30代で若いですし、もっと成長していかないといけないです。自分はまだまだで、桶さんや大野(篤史)さんなど、日本人のもっと素晴らしいコーチはいます。彼らに追いつけるように、若いコーチとしてこれからも成長していきたいです」 コートサイドから感情むき出しで指示を送り、味方のナイスプレーに雄叫びをあげてチームを鼓舞する熱さは琉球でヘッドコーチ人生をスタートさせた時から全く変わらない。そして昔から戦略や戦術に関する博識ぶりは一目置かれる存在だった指揮官は、様々な経験を積むことで、よりチームを俯瞰的に見るマネジメント力を確実に向上させている。 今回の2連戦は、宇都宮が昨シーズンと違うこと、そして佐々の指揮官としてのステップアップを改めて証明する舞台となった。
鈴木栄一