"オヤジ"たちのプライドを賭けた闘い!「逃亡者」ハリソン・フォードとトミー・リー・ジョーンズは全てが格好いい
1993年公開の「逃亡者」といえば、無実の罪を着せられたハリソン・フォード扮する外科医を主人公にしたサスペンス&アクションムービー。愛する妻を殺され、官憲に追われながら一人事件の真相を追うハリソン。絶体絶命の状況から連邦保安官ジェラードの追跡をかわして、汚名を晴らさんと孤独な闘いに身を投ずる。 【写真を見る】ハリソン・フォード、トミー・リー・ジョーンズ共演の「逃亡者」 「スター・ウォーズ」のハン・ソロ、1980年代には「インディ・ジョーンズ」シリーズでハードボイルド俳優の地位を確立したハリソン・フォード。彼が「逃亡者」で演じる外科医リチャード・キンブルは、妻のヘレンを何者かに殺されて平和な日々が暗転する。事もあろうに、シカゴ市警に誤認逮捕された上に死刑を宣告されてしまうキンブル。だが護送車が、他の囚人が逃亡を企てて車内での格闘の末に転落、列車と衝突した混乱に乗じてキンブルは逃亡する。 逃亡の前後でのキンブルの変貌ぶりに注目してほしい。警察署で尋問されるキンブルは不安げで、ヒステリックに刑事に反論したりする様子を見ると「何か裏があるのでは」と刑事でなくても思いたくなる。法廷でも頼りなさそうにしていたキンブルは、逃亡し覚悟を決めると別人に。事故で傷を負ったのもかまわず冷たい川を渡り、山中のカーチェイスで追ってから逃げていくのはマッチョでダンディなハリソンの面目躍如というところだ。 キンブルを追うのは、トミー・リー・ジョーンズが扮した連邦捜査官サミュエル・ジェラードと部下たち。護送車の事故現場に現れたトミーのジェラートは初登場の瞬間から"デキる男感"がたっぷり。テキパキと非常線を張る指示を矢継ぎ早に出していくだけで格好いい。ジェラードが率いている部下たちもキャラが立っていて、紅一点の黒人女性プールや可愛げがある若い新人のニューマンら「チーム・ジェラード」の面々の活躍もサスペンスドラマの王道を行く。 もともとは1960年代に制作されたドラマのリメイクのためか、1話1時間弱で終わるドラマのように展開はスピーディー。山中での逃走劇からキンブルが戻ってきたシカゴに舞台を移して、サスペンスの要素が強くなっていく。ジェラードのリーは山中でのラフな服装も素敵だが、シカゴで捜査している服装の格好よさも必見。特にクック郡病院から拘置所、セント・パトリック・デーの行列にまぎれたキンブルを追うまでの、紺のコートにエンジ色のマフラーとジーンズ、紺のジャケットにきっちりネクタイを締めたいでたちは、フォーマルの中に捜査官らしいアクティブさも醸し出している。厳格な法の番人たるジェラードを象徴する装いだ。「逃亡者」の名場面といえば、山中でジェラードに追われたキンブルが、水道管での追跡劇を経てダムの絶壁から川へダイブするシーンがあるが、シカゴでの駆け引きも見ごたえがある。 そして事件の黒幕になるチャールズ・ニコルズ(ジェローン・クラッベ)と真犯人の義手の男、フレデリック・サイクス(アンドレアス・カツーラス)にキンブルは接近していく。 公開当時、ハリソンは51歳でトミーは47歳。クラッベとカツーラスも40代で、メインキャラクターは全員が年季の入った"オヤジ"。生半可な若者ではない大人だけでのドラマだからこそ、彼らのプライドを賭けた闘いに見入ってしまう。キンブルは己の冤罪を晴らすため、ジェラートは保安官として法と正義を守るため。最後に本性を現すサイクスとニコルズも、少しも動じないで悪の魅力を放つ。 ラストはやっぱりハリソンのためか、肉弾戦で決着をつける。円熟した男たちのバトルにパトカーやヘリコプターも繰り出し、舞台は豪華なシカゴのヒルトンホテル。アメリカのアクション映画の王道を行く舞台設定で、キンブルとジェラードに生まれた絆に溜飲が下がる、スカッとする物語だ。 文=大宮高史
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