見附島思い鎮魂の合唱 山瀬さん指揮の泰声会 「島よ」金沢で7月公演 崩落の姿、本紙見て衝撃
60年にわたり石川県内で合唱指導を行う山瀬泰吾さん(80)=白山市倉光西=が指揮する泰声会(たいせいかい)が、能登半島地震で崩れた珠洲市の見附島に心を寄せた合唱曲の練習に打ち込んでいる。故郷の能登町松波に近く、山瀬さんが幼い頃から見続けている島の姿に犠牲者への鎮魂の思いを重ね、タクトを振る。金沢で7月に開く公演には被災者も招く予定で、能登再生の祈りを込めた歌声を響かせる。 山瀬さんは音楽教諭として二水高や泉丘高、金沢学院大の合唱部を指導して若い世代に歌う喜びを伝えてきた。泰声会は山瀬さんと親交が深い作家五木寛之さんが名付け親の「金沢カペラ合唱団」、かつての教え子でつくる女声合唱団「杏(あんず)」と「悠(ゆう)」の3合唱団を合わせたグループとなる。 自身の傘寿記念コンサートを昨年までに終え、山瀬さんは今年の公演で、生誕100年の作曲家大中恩(おおなかめぐみ)さんの混声合唱曲「島よ」をメインに据えることを決めた。昨年末、練習を始めた直後に地震が発生した。 愛着の深い見附島が大きく削られた姿を、北國新聞の紙面で見て衝撃を受けたという山瀬さん。「私にとって、『島よ』の歌詞は見附島への思いそのもの。地震を経て、この曲を石川で合唱する意義を感じた」と使命感を新たにした。 泰声会は本番に向けて県白山青年の家(白山市)で合宿練習に臨んでいる。6曲で構成され、約20分に及ぶ「島よ」の合唱を繰り返し、山瀬さんは「見附島が一番きれいな時の姿を思い浮かべて」「その歌声で亡くなった方々の魂を慰めることができるか」と声を張り上げた。 曲の最後に「島よ おまえは私ではないのか」との歌詞がある。山瀬さんは「この言葉に全てがつながっていく。聴く人それぞれの人生が思い浮かぶような歌声を届けたい」と話した。 公演「新しい風コンサート」(北國新聞社後援)は7月6日に金沢市アートホールで開催する。「杏」30周年、金沢カペラ合唱団20周年のステージにもなり、開演は午後2時。入場料は一般千円、中高校生500円、小学生以下は無料。