「辞めるのはいつだってできる」引退も考えた井上愛里沙を説得した眞鍋政義監督のひと言「お前を最後に選ぶかどうかは分からない。でも…」
電話で井上愛里沙に伝えたこと
そこで電話で井上と話をした。そのときも古賀同様、率直に私が思っていることを伝えた。彼女が傷ついていることは分かっていたので、まずは励ますことを第一に考えた。 「東京はもう終わったことやし、考えてもしょうがないやろ。辞めるのはいつだってできるよ。おまえはジュニアであれだけ活躍して、久光でも優勝して、得点王も取ったんだから、まだまだやれると思うよ。悔しい思いがあるのなら、パリに向けていっしょにやろう。年齢的にもパリが一番いいと思うよ」 禍福はあざなえる縄のごとし。パリを目指すチームで活躍すれば、一躍日本の救世主になれる。つらい経験をしても、ポジティブ発想に転換すればいいのだ。 ただし、その上でこう付け加えるのも忘れなかった。 「でも、おまえを最後に選ぶかどうかは分からない。それは活躍次第や。でも、俺はおまえならできると思うよ」 井上が「ちょっと考えます」と言うので、ひとまず電話を切った。 それから1週間ぐらいして、あらためて電話してみたら、「やらせていただきます。 パリに向けてがんばります」と明るく言ってくれた。「よっしゃ、じゃあ、いっしょに がんばろう!」
今回の代表には京女が多い
2022年、新生ジャパンの初陣で、井上愛里沙は爆発的な活躍を見せることになる。 これは余談だが、井上をはじめ、林琴奈、福留慧美(さとみ)など、今回の代表には京都出身者がけっこういる。われわれ関西人にとって、京都人はちょっといけずなイメージが ある。たとえば、京都の人に「眞鍋さん、よう来はったなあ。うちにあがっていって」 と言われたとする。でも、「あ、そうですか」とすぐにあがってはだめなのだ。3回は断って、「それでも」と言われたら、ようやくあがってもいい。そういう暗黙のしきた りを知らないと、ただの図々しい人だと思われてしまう。 だから、冗談で「今回のメンバーは京女が多いから怖いなあ。ちょっと注意しない といけないな」と言ったりしている。そうすると井上は、「じゃあ、京都会つくっちゃ いますよ」と脅してきたりする(笑)。 <続く>
(「バレーボールPRESS」眞鍋政義 = 文)
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