《告白》嘘を重ねリーマン・ブラザーズから371億円を騙し取った男が15年越しに「本当のこと」を話そうと思った理由
「一度1億円を手にしたら次は10億円、その次は100億円を求めるようになってキリがない。“靴を履き替えるように”と揶揄されるほど次々に高級車を買っては乗り回していた当時、常に恐怖や焦燥感と隣り合わせでした。車が好きだったのも、本当のところは乗って運転している間は誰とも話さずに済むからという理由でした」 当然、悪事は長く続かず、じわりじわりと押し寄せてくる当局やマスコミから逃れるために香港へ高飛びするも身柄を拘束されて万事休す。2008年6月、成田空港に降り立った斎藤氏は桜田門の警視庁に連行されて御用となった。取り調べでは、知人に託した“隠し資産”を秘匿するために黙秘を続け、2009年9月、東京地裁で懲役15年を言い渡されて収監の身となった。 「獄中生活では、さまざまな闇を目の当たりにしました。刑務所内でポツリポツリと話すようになった受刑者の多くは、家庭や周囲の環境に恵まれず、中学すらまともに通えていなかったと聞き、悲惨な人生を歩んでいました。 また、ほとんどの刑務官は、受刑者を人間として見ていなかった。受刑者同士のいじめを見て見ぬふりをするのは当たり前で、気に入らないとトイレすら我慢させられるなど露骨な嫌がらせをする。中には、独房で2週間放置され、不審死を遂げた受刑者もいました。しかしそうした実態は外の世界にはほとんど明かされることはありません」 14年ぶりに戻った娑婆で、天国と地獄を知る男はどこに向かうのか。柔和な表情のまま目を光らせて、齋藤氏はこう語った。 「長い獄中生活を経験して、刑務所内のあまりにもひどい実態に光を当てることができないかと考えるようになりました。文字や言葉に置き換えて表現し、多くの人に知ってもらえたらと思っています。 それからもう一つ、逮捕前に資産を託した共謀者はカネを持ったまま私から逃げている。彼を追い詰めてバブルの決着をつけるまで、私の“リーマンの牢獄”は終わりません」 日本経済の表と裏を知り尽くす齋藤氏は、第二の人生も波乱含みになりそうだ──。 【プロフィール】 齋藤栄功(さいとう・しげのり)/1962年長野県生まれ。1986年に中央大学法学部卒業後、山一證券に入社。同社の自主廃業後、外資系証券会社などを経て、医療経営コンサルタント会社「アスクレピオス」を創業するが、2008年に詐欺およびインサイダー取引の容疑で逮捕され、懲役15年の実刑判決を受ける。2022年6月に仮釈放され、2024年5月、その経緯を自らまとめた『リーマンの牢獄』(講談社)を上梓。
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