80年代映画が自由すぎる…「ロス疑惑」の三浦和義に「内田裕也」が本当に直接取材する「常識外れのワンシーン」
いま、1980年代が注目を集めている。TBS金曜ドラマ『不適切にもほどがある! 』は、1986年と2024年の時代差を描くことで80年代カルチャーの郷愁をくすぐり、令和の激しいコンプライアンスの息苦しさに対し疑問を呈して共感性を高め、SNSで話題沸騰となった。じつはその1980年代の10年間のみ、日本映画が配給収入で外国映画を大きく超えたことをご存じだろうか。 【漫画】刑務官が明かす…死刑囚が執行時に「アイマスク」を着用する衝撃の理由 日本映画界に狂乱と退廃、新進気鋭の才気があふれ出した1980年代。そして『復活の日』『ヨコハマBJブルース』『ダブルベッド』『お葬式』『家族ゲーム』『コミック雑誌なんかいらない』など、80年代の話題作を手掛け邦画全盛期を築いた怪物プロデューサーが、岡田裕だ。『なぜ80年代映画は私たちを熱狂させたのか』(伊藤彰彦著)より抜粋して、80年代を象徴する映画『コミック雑誌なんかいらない』(プロデューサー:岡田裕 監督:滝田洋二郎)の裏側と当時の「時代感」をお届けする。 『なぜ80年代映画は私たちを熱狂させたのか』連載第4回 『『ふてほど』で話題の80年カルチャー…時代を全力疾走した「内田裕也」の「意外すぎる一面」』より続く
時事問題を即材に脚本化
――『コミック雑誌なんかいらない』の撮影開始が85年6月21日、目黒サレジオ教会での神田正輝と松田聖子の結婚式。このとき配付された撮影台本(池島ゆたか所蔵)を読むと、その3日前(6月18日)に起きたばかりの「豊田商事永野会長刺殺事件」(詐欺商法で数万人に被害を与えた豊田商事会長が、マスコミ取材班の目の前で詐欺被害者の上司に当たる男二人に惨殺され、その光景がニュースで流れた事件)がすでにラストシーンになっています。これはどういうことでしょう? 滝田 たぶん……事件が起きて、「これだ!」とひらめいて、刺殺現場にキナメリ(内田裕也演じる主人公)が飛びこみ、犯人(ビートたけし)と格闘するラストに書き換え、クランクインに間に合うように印刷したんじゃないかな。 その前の稿のラストは覚えてないけど、キナメリが芸能事件じゃなく、「ウォーターゲート事件」(ニクソン大統領辞任につながる、元CIA職員らによる民主党本部での盗聴を発端とする事件)みたいなスキャンダルを見つける展開になっていた気がします。