仲よく写真に納まる築比地里絵さん（左）と垣添栄美さん（垣添栄美さん提供）

◇記者コラム「Free Talking」 　女子相撲界のパイオニアである築比地里絵さんが、7月23日に46歳の若さで亡くなった。まだ「新相撲」と呼ばれていた女子相撲誕生当初から活躍。1996年度の第1回全日本選手権から無差別級で11連覇を果たしたレジェンドだった。 　159センチ、150キロ。相撲を始めたのは拓大入学後と遅かったが、パワーあふれる取り口で世界でも活躍。世界女子相撲選手権で金メダルを獲得した。 　現在の女子相撲を取り巻く環境は、築比地さんのころとは一変した。8月には第1回全国高校女子相撲選手権が開催されるなど、大会数も増加。9月にポーランドで開催された世界女子相撲選手権では、5階級のうち3階級で日本勢が金メダルを獲得。確実に注目度は上がっている。 　築比地さんが始めた当時はまだスポーツとしてではなく、女性が相撲を取る物珍しさに注目が集まった。バラエティー番組に呼ばれた時も好奇の目で見られていたと聞く。そんな時でも「次の世代へという思いでやっていたと思います。『私はいいのよ』って言っていました」。そう語るのは中学3年のころから築比地さんと交流があり、重量級で日本一に3度輝き、第2回世界女子相撲選手権では築比地さんとともに日本代表を団体金メダルに導いた垣添栄美さん。現在は雷部屋のおかみさんである。 　築比地さんとは亡くなる半年前に会ったばかりだった。「前触れもなく突然でした…。LINEをしても既読にならなくて。亡くなったと聞いた時は、ふざけてるのかなと…」と栄美さん。次に会う約束もしていたといい、悲しみをこらえながら話した。 　稽古では築比地さんの胸を借りた。「当たった瞬間に首のヘルニアになりました。あの胸の中に埋もれる感じで。今も強い子はいるけど、築比地さんが今いたら面白かったんじゃないかなって思います」と振り返る。 　亡くなる前に言われた言葉がある。「女子相撲出身で、あなたが初めて相撲部屋のおかみさんになったことには意味があるのよ」と。スポーツとして地位を確立しつつあるが、男子と比べるとまだ道半ば。だからこそ力を貸してほしい―。女子の発展に尽力していた築比地さんの“遺言”として受け止めている。（大相撲担当・岸本隆）