横浜流星が5つの顔を持つ逃亡犯を演じ分ける!人間の醜悪さと素晴らしさを描いた映画「正体」を鑑賞
2024年11月29日(金)より全国公開される映画「正体」。横浜流星さんが主演を務め、監督は「余命10年」(2022年)や「最後まで行く」(2023年)が記憶に新しい藤井道人さん。公開前に試写で観た本作の感想を紹介する(以下、ネタバレを含みます)。 【写真】どんな姿であってもくぎ付けになる横浜流星!場面写真11点が公開 原作は、染井為人さんによる小説「正体」(光文社文庫)。日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けたが脱走し潜伏を続ける主人公・鏑木慶一を横浜流星さんが演じる。横浜さんと藤井監督とのタッグは、「青の帰り道」、「ヴィレッジ」に続き、長編では今回で3回目となる。 ほか、メインキャストに吉岡里帆さん、森本慎太郎さん、山田杏奈さん、山田孝之さんと、本作への出演を熱望した“主演級”の豪華キャストが集結。藤井組に俳優として出演するのは、全員今回が初となる。 ■彼は凶悪犯か、無実の青年か? 【ストーリー】 日本中を震撼させた凶悪な殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木が脱走した。潜伏し逃走を続ける鏑木と日本各地で出会った沙耶香(吉岡里帆さん)、和也(森本慎太郎さん)、舞(山田杏奈さん)、そして鏑木を追う刑事・又貫(山田孝之さん)。又貫は沙耶香らを取り調べるが、それぞれが出会った鏑木は全く別人のような姿だった。間一髪の逃走を繰り返す343日間。彼の正体とは?そして顔を変えながら日本を縦断する鏑木の“真の目的”とは…。 ■とにかく横浜流星さんの“画力”がすごい 筆者は原作既読のため、かなりの大作小説を果たしてどうまとめるんだろう…と不安もあったが、しっかりサスペンス&ヒューマンドラマとして要点をおさえて作られていて、藤井道人監督すごい!となった。 まず、冒頭の鮮烈なシーンから早いテンポで主要キャストが次々と出てくるので、本当にあっという間に映画の世界に入り込める。この時点で期待値は爆上がり。そして原作に忠実な展開・シリアスなトーンで話が進んでいく。 映画は和也(森本慎太郎さん)パート、沙耶香(吉岡里帆さん)パート、舞(山田杏奈さん)パートと分かれており、それぞれに登場する鏑木の姿が異なるのだが、どんな姿であっても横浜流星さんにくぎ付けとなってしまった。多くを語らない分、なにかを必死で訴えている目の演技、話し方ににじみ出る真っ直ぐさ、リアルなアクション、どれもが素晴らしい。 脇を固めるキャストも豪華絢爛、みなさん圧巻の演技なので各パート見応え十分なのだが、個人的には沙耶香(吉岡里帆さん)パートの、彼女とお父さん(田中哲司さん)の会話にぐっときた。鏑木の件とは違う、とある事件で裁判を行っているのだが、「もう俺の声は誰にも届かない」と弱気になる父を沙耶香は「今は届かなくても声をあげ続ければきっと誰かに届く」と鼓舞する。ここで「冤罪」について、「人を信じる」ことについて、たくさんたくさん考えた沙耶香だからこそ、鏑木に対してああいった行動ができたのだ。 映画を見終わったあと、“自分だったら”、“身近で起こったら”、…そして社会の理不尽さについて考えさせられる。直近で報道されたあの事件のことを思い浮かべる人も多いだろう。自身が発信する側の人間としては、メディアの報道の在り方という点についても考えさせられた。 あとは、正直、映画館で「何分経ったかな」「残りどれくらいだろう」と時計を見ないで済む映画というのはとても少ないと感じているのだが、本作はストーリーのテンポのよさと横浜流星さんの画力の強さ、主要キャストの安心感のある演技によって120分しっかり没入することができた。人間の醜悪さと素晴らしさをどちらも描ききっているので、ぜひスクリーンで観てみてほしい。 (C)2024 映画「正体」製作委員会