【SNS詐欺】官民連携し撲滅図れ(6月5日)
交流サイト(SNS)を悪用した投資詐欺の被害が県内で急増している。高齢者が数百万円から数千万円単位の高額な金銭をだまし取られる事例が目立つ。手口は巧妙化しており、被害はさらに拡大する懸念がある。県警と自治体、金融機関、通信業者が連携を強め、偽の誘いに応じてしまう原因や背景を探り、きめ細かな対策を早急に講じる必要がある。 県警によると、フェイスブックやLINEで著名人らに成り済まして投資を勧誘する「投資型」と、恋愛感情を抱かせて支援金名目や投資話で金銭をだまし取る「ロマンス型」に大きく分かれる。昨年1年間で双方合わせ23件、2億2902万円の被害があったが、今年は4月末までに既に24件発生し、被害額は2倍近い4億733万円に上る。年齢別では70代が6件、65~69歳が3件、60~64歳が5件で、年齢の高い層が6割近くに達している。 誰かに成り済まして金をだまし取る詐欺は20年ほど前に広がり始めた。従来は被害者宅を訪問し、現金を直接受け取る手口が主流だった。最近はSNSを使って相手と会わずに金銭をやりとりするため、警察は摘発の端緒をつかみにくいという。
高齢者が被害に遭うのは、低金利という時代背景も影響しているのではないか。老後資金の確保を考えた場合、少しでも利息の高い金融商品に関心が高まる。ロマンス型は1人暮らしの孤独な心の隙につけ込んでくる。本紙の取材に応じた会津地方の70代男性は「俺みたいな老人を相手にしてくれるのか」との思いがあったと明かしている。 被害防止に向けた対策として、高齢者向けの講座を市町村単位で開くよう提案したい。警察官や金融機関職員らが講師を務め、被害の実態や手口、金融情勢や投資の仕組みを分かりやすく解説する。迷惑メールの受け取り拒否などの操作方法を通信業者から教わるのも意義がある。 福島民報社は、県警と連携して詐欺抑止啓発緊急キャンペーンを始めた。詐欺に似せた広告をスマホにあえて掲載し、注意を喚起する。さまざまな情報が氾濫する中、真偽を見分ける力を磨く必要もある。社会全体で詐欺撲滅の機運を盛り上げていかねばならない。(渡部純)