ファーストサマーウイカが清少納言らの魅力を語り尽くす!──大河ドラマ「光る君へ」
NHK総合ほかで放送中の大河ドラマ「光る君へ」。まひろ(吉高由里子)が藤原道長(柄本佑)との子を出産し、宣孝(佐々木蔵之介)と共に、わが子として育て始めたり、定子(高畑充希)が一条天皇(塩野瑛久)との3人目の子を出産し、世を去ることになったり…。思わぬ展開に息をのんだ方も多いのではないでしょうか。 7月28日放送の第29回「母として」では、ききょう/清少納言(ファーストサマーウイカ)が定子のために書き始めた「枕草子」を完成させ、定子の兄・伊周(三浦翔平)に、定子のキラキラしていた姿が多くの人の心にとどまるよう、宮中に広めてほしいと託します。定子の華やかな時も苦しい時も慕い続けた清少納言。なぜ、定子の“光の部分”だけを書き残したのか? 清少納言や定子の生き方についてどのように感じたのか? 大河ドラマ初出演でききょう/清少納言役のファーストサマーウイカさんに聞いてみました。
“清少納言の生まれ変わり”かもしれない
――ファーストサマーウイカさんにとっては初めての大河ドラマ出演ですね! どういった経緯でオファーを受けたのですか。 「“御三家”とお呼びしている、脚本の大石静先生と制作統括の内田ゆきさん、チーフ演出の中島由貴さんから『ちょっとお話を伺いたいんですけど』と声をかけていただき、面談に至りました。最終プレゼンテーションのような気持ちで挑みましたね。その後、正式にオファーを頂きました」 ――“清少納言役”と聞いていかがでしたか? 「『え!? 紫式部が主役のドラマで清少納言役!?』と度肝を抜かれました。誰でも一度は名前を聞いたことのあるような人物で、本を書いたことも知っている人が多いと思いますし、歴史上で印象的な女性は数が少ない気がするので、演じられることにうれしい気持ちでいっぱいでした」 ――清少納言にどんな印象を持っていましたか。 「実際どういう人物なのかは、あまり深くは知らなかったんですよね。役が決まってから、清少納言が書いた『枕草子』や、彼女に関わる本をたくさん読んでみたら、考え方や表現の仕方が非常に私と近い人物だと思いました。最近はSNSで“清少納言の生まれ変わり”と言っていただくこともあるんですけど、『いやいや、言い過ぎでしょう』とも思わないというか(笑)。『かもしれない』と思うぐらい、すごく親近感を持っているんです。脚本もそうですし、清少納言について残された本を読んでも、考え方が似ているなと思う部分が多々ありました」 ――歴史上の有名な人物と自分自身がそっくりとは、驚きですね! 「大河ドラマでは珍しいことなんじゃないかと言われて。『徳川家康は自分と本当にそっくりなんですよ』と言う人はあまりいなかったと思うんですよね。ここまで感情移入できるというか、『そうそう、こういう時はそう言うよね。逆に、これ以外なら何て言うの?」と、本当に自分と重なり合うような瞬間がたくさんあります。だから、清少納言のことを知れば知るほど、不安が消えていきました。演じる前は、まひろのライバルで大丈夫かな、とプレッシャーがありましたけど、今は『清少納言はほぼ私だから』という気持ちです。感情表現で『全然気持ちが分からないよ!』と思うことは一度もないです」 ――気持ちが手に取るように分かるとはこのことですね(笑)。清少納言は「私は私の志のために夫を捨てようと思いますの」のような心(しん)の強さを感じるセリフが印象的です。ウイカさんから見た清少納言の魅力はどんなところでしょうか? 「自尊心があり、自分の実力を把握していて、空気を読んであえてぶち壊すことを選択できる人だと解釈しています。『志のために夫を捨てる』は、清少納言の史実というより、『光る君へ』におけるききょうとしてのストーリーだと私は捉えていて。諸説あるかと思いますが、元夫とも交流が深くあったり、2人目の夫もいたり、意外と恋に奔放であったという説もあって(笑)。『光る君へ』で描かれているききょうは、自分の信念を曲げないというか、野心を優先するという選択をしました」 ――とても大きな決断のように思います。 「『家庭も大切だが、己の可能性を広い世界で試したい。家族がそのかせになるのなら、私はそれを捨てる』という選択が、史実でも創作でもどちらであっても、『我が道に迷いなし』という強さに合点がいく、賛同できるなと。流れにただただ身を任せないというか、自分で人生を切り開いていくという姿勢は、平安時代の女性の中では異端であったような気がします。それでもききょうは周りの評価を気にせずに、宣言して実行しました。魅力的だし、まさにその強さにまひろは感化されたんだと思います」 ――本当にかっこいい女性ですよね。 「まひろの物語なので、その中の一つのモデルケースとして、清少納言のようなキャラクターを置いたとも解釈できます。現代でも、キャリアを重視する女性が増えてきましたけど、私も好き勝手にやりたいように人生を歩んできたので、自分の力で人生を切り開いていく姿勢にはとても共感できます。『私もそうすると思う』と清少納言に言いたいですね」 ――役に共感できると、それだけ愛情を持って演じられそうです。そんなウイカさんそっくりな清少納言ですが、演じる上で意識していることはありますか。 「1人で幅広い年齢層を演じますし、毎週出番があるわけではないので、年齢表現を重視しています。まひろや定子さまなど共演する人によって接し方や話し方も変えているんですよ。メークもメークさんと相談しながらキリッと見えるようにしたり、優しく見えるようにしたり、登場シーンによってわずかに変えていて。すっぴんに近いメークだからこそ、表情がより伝わるんですよね」 ――自分とは違う年齢層を演じるのは難しそうです。 「今後、清少納言は、丸い部分と尖っている部分が明瞭に見えてきそうです。まひろはこれからどんどんキリッとしていくと思いますしね。年齢表現にも注目してみると、役者さんのすごさが見えてきますよ。個人的にも楽しみなポイントです」 ――役者さんならではのおすすめポイントですね。平安時代の所作の習得はいかがでしたか? 「女房たちは雅な世界の中でゆったりと動いているので、名前を呼ばれて「何!?」と急に振り向くのではなく、「何でしょう」と、たおやかに振り向いてください、と習いました。でも何度考えても、清少納言はキビキビと行動することもあるのではないかなと思って。着物の裾さばきなどに意識的に取り入れました」