時速194キロでも「危険運転」適用に難しさ、遺族「認められない不安ある」…大分の衝突死亡事故で5日初公判
大分市で2021年、時速194キロで乗用車を走行して車に衝突し、男性を死亡させたとして、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死)に問われた元少年(23)の裁判員裁判が5日、大分地裁で始まる。元少年は同法違反(過失運転致死)で在宅起訴されたが、遺族らがより法定刑の重い危険運転致死の適用を求める署名を集めるなどした後に訴因変更された。焦点は適用のハードルが高い「危険運転」と認められるかどうか。公判の行方が注目される。(山口覚智、水木智) 【図解】一目でわかる、事故の状況
事故で命を落とした会社員小柳憲さん(当時50歳)の姉、長(おさ)文恵さん(58)は10月中旬、事故現場となった同市の県道交差点を訪れた。「弟は最期に何を思ったのだろう」。現場に足を運ぶたび、事故の瞬間を想像してしまい、優しかった弟に思いをはせる。
事故は21年2月9日深夜に起きた。起訴状などによると、当時19歳だった元少年の乗用車が、法定速度の時速60キロを130キロ以上超える194キロで県道交差点に進入し、右折する小柳さんの車と衝突した。小柳さんは車外に投げ出され、事故の翌日、亡くなった。
22年7月、大分地検は過失運転致死で在宅起訴した。長さんは地検から「衝突までまっすぐ走れており、直線道路での走行を制御できていたことになる」との説明を受けた。
危険運転は、〈1〉「制御困難な高速度」で走行したり、〈2〉「妨害する目的で接近」したりして事故を起こした場合などが適用要件となっている。このうち〈1〉は直線道路では、猛スピードでも運転操作ができたとして、危険運転が認められないケースが目立つ。事故現場は直線道路だった。
「常識外れのスピードなのに、過失なわけがない」。長さんらは危険運転致死への訴因変更を求め、署名活動を始め、約2万8000筆を22年10月に地検に提出した。地検は補充捜査を行い、同12月、〈1〉と〈2〉の要件を併せた危険運転致死への訴因変更を大分地裁に請求し、その後認められた。地検は過失運転致死も予備的な訴因に加えている。