9人きょうだいの末っ子、母に贈る柔道日本一 「恩返ししたかった」 しんどいはずなのに女手一人で育ててくれた、感謝胸に進む柔の道
柔道の全国高校選手権女子52キロ級決勝で、佐久長聖2年生の納庄千寿が延長で大井彩蓮(滋賀・比叡山)を破り、初優勝を果たした。
女子52キロ級決勝に臨んだ納庄に異変が出たのは開始から約1分。この日5試合目で、「疲れでつってしまった」と左肩を何度も気にする素振りを見せ始めた。第1シードの大井彩蓮(滋賀・比叡山)の攻めをかわしていたが、指導は先に受けた。兵庫県出身の2年生は「ここで負けたらあかん」。延長突入直後の背負い投げで技ありを奪い、劣勢をはねのけた。
「日本一になって母に恩返しがしたかった」。優勝後のインタビューで口をついたのは母の美和さんへの感謝だった。納庄は9人きょうだいの末っ子で、兄も姉も柔の道に進んだ。美和さんは女手一つで育ててきた。
母への感謝は結果で返す―という思いが原動力だ。「しんどいはずなのに、自分たちのために仕事を頑張ってくれている」。この日駆けつけた美和さんの前で「女王」の称号を手にし、「この結果を維持し、世界でも結果を残す」と夢は広がった。(千野裕理)