Eテレのお悩み相談番組が書籍化。美輪明宏が心のモヤモヤに寄り添い、語り尽くす!
周りの人のSNSを見ていると、家族に恵まれ仕事も順調で、なんて幸せそうなんだろう、それに比べて私は......なんて思ってしまうことありませんか。しかし外からは見えないだけで、実際は多くの人がさまざまな悩みや葛藤を抱きながら生きているはず。そうした誰もが秘めているモヤモヤした気持ちに、愛と美の伝道師・美輪明宏さんが向き合い、語り尽くすのが『愛のモヤモヤ相談室』。Eテレの人気お悩み相談番組を書籍化した一冊です。 同書に収録されているのは、人間関係に仕事関係、容姿や能力、病気、金銭問題などありとあらゆる悩みの数々。たとえば、「本当は強い承認欲求や嫉妬心を持っているのに、それを隠して学校生活を送る自分が偽善者のようで好きになれない」と言う若き相談者に対して、美輪さんは「あなた、普通のことで悩んでいらっしゃるんですね」とズバリ。認められたいという欲求は誰しも持っているもので、「みんな、善人の部分と悪人の部分とを、行ったり来たりしているんです。そうやって人間は、成長していく。成長過程だから、そのままでいいんです」(同書より)とアドバイスします。世の中に完全な人間はおらず、さまざまな人生経験を積みながら常に成長していくものだという言葉は、中年に差し掛かった自分の心にもすっと染み込んでくるものがあります。 このように、89年の人生を生きてきた美輪さんは、広大な宇宙から俯瞰しているかのごとく、広い視野で物事の本質をとらえます。このような「宇宙的な目で物事を見る」ためには、「お星様を見る」のがよい訓練になるかもしれません。 「広大無辺の宇宙があって、地球があって、世界があって、国があって、県があって、市があって、町があって、個人の家があってというふうに引いて見て、だんだんと自分の個人的なものへと寄せていく。そうすると本当の問題が見えてくるから、ご活用ください」(同書より) 自分のこととなるとなかなか冷静になれず感情に支配されてしまいがちな人(私も含め!)は、試してみる価値がありそうです。 この混沌とした世の中を生きるには、「おのれを信じるということが一番大事」だという美輪さん。「どんな困難が降りかかっても、『どうせ命までは取られやしない、今まで生きてこられたんだから。今度もできないことはない』と思うこと」(同書より)が大切だと言います。三島由紀夫に江戸川乱歩、川端康成、岡本太郎......そうそうたる人物と親交があった美輪さんだけに、その言葉の数々にはゆるぎない説得力が感じられます。 もし「なぜ自分がこんなにつらい目に遭わなければならないんだろう」と思うことがあったら、ぜひ同書を開いてください。誰もが心のうちにさまざまな苦悩を抱えていることがわかるとともに、美輪さんから前向きに生きるヒントを得て、明日を生きる勇気が自然と湧いてくるのではないでしょうか。 [文・鷺ノ宮やよい]