ワコムペン付属の「ASUS ProArt Display PA169CDV」は高級モバイルディスプレイの王道を行くのか? プロ絵師が試す
内蔵スタンドが「2つ」!?
外観を見ていきましょう。表からの見た目は普通のモバイルディスプレイのようなバランスですが、ほぼ全面がガラスに覆われていて非常に質感が良いです。 ボタンや接続ポートは左側面に集中しています。 ダイヤルは回転と押し込み操作が可能で、アプリやOSの機能にドライバで割り当てる方式です。隣のスイッチで、カチカチとクリック感をつけるかスルスル回るかを選ぶことができます。ダイヤルは素材は良いものの、スレるような音や軸方向のガタつきがあったり、クリック有効時には不安定に引っかかるような違和感があったりと、全体的な品質にそぐわない操作感なのが惜しいです。個人的にはずっとクリック無効で使っていました。 裏面も格好良く、一般用途に適した54度~75度で調節できるメインのスタンドと、ペンやタッチ操作に適した17度に設定できるサブのスタンドが内蔵されています。 キックスタンドだけで深く倒せるデバイスもありますが、ペンを持った手を置いたり筆圧をかけたりすると一番下まで潰れてしまって困ることがあり、スタンドを分けるのは良い工夫です。実際に剛性感もあり、何の不安定さもなく利用できます。
意外と悩ましい接続方式
接続はUSB Type-CかHDMI経由ですが、USB Type-Cケーブル1本だけで接続した場合には最大輝度が180ニトに制限され、付属のUSB Power Delivery(PD)アダプターで電源を入力すれば高輝度まで利用できます。HDMIケーブルを使う場合は、ペンとタッチの通信のために、USB接続と付属のACアダプターで合計3本の接続になります。 いずれの場合も、倒した設置ではケーブルが手前側から左に出てくるのが邪魔です。ダイヤルを使うときは手首でケーブルを圧迫しないように気を付ける必要がありますし、右利きの人はキーボードや左手デバイスの設置で苦労すると思います。
真面目なディスプレイを搭載
ディスプレイも見ていきましょう。本機もシリアルナンバー付きのキャリブレーション報告書が添付されています。 仕様表に書かれている色空間としては「sRGB 100%」ですが、工場出荷状態の「Standard」モードを手元で計測してみると、DCI-P3やDisplay P3よりもAdobe RGBを優先した広色域ディスプレイのようでした。 また、配布されているドライバを導入すればカラープロファイルがセットされます。測色機などを持っていなくても、色の一致について比較的安心してStandardモードを利用できると思います。 もちろんカラーシミュレーションモードもありますが、sRGBモードは規定を真面目に守って作られているせいか、輝度がかなり暗い値に固定されてしまい、薄暗い環境でないと実用は困難です。 高輝度に対応しているのは、モバイルディスプレイとして色再現にこだわりたい中ではうれしい仕様です。表示を正確に見たいなら画面に外光を当てないのが一番ですが、モバイル用途ではいつも理想的な環境になるとは限らず、浅い角度に設置する用途ではなおさらです。液タブだと200~300ニトぐらいが多かったと思いますが、本機は別途電源をつなぐ必要があるとはいえ仕様としては最大450ニト、手元の計測では500ニト以上の明るさが出ていました。