2年ぶり7度目Vの青学大 基本軸とする「原メソッド」と学生たちが見せた「駅伝力」/箱根駅伝
◇第100回箱根駅伝(東京・大手町←→神奈川・箱根町/10区間217.1km) 第100回箱根駅伝が行われ、青学大が2年ぶり7回目の優勝を果たした。 第100回箱根駅伝総合、往路、復路成績&区間賞をチェック! 優勝会見に臨んだ青学大。原晋監督は冒頭で「1月1日の震災において、本来であれば家族団らんで箱根駅伝をご覧になろうとしていた方が数多くいらっしゃると思います」。そうした中での開催に「御礼申し上げます」と感謝を述べた。 2年前に先輩たちが打ち立てた大会記録を、さらに更新する10時間41分25秒という衝撃的な大会新。だが、「12月中旬までは優勝なんてできっこないという状況でした」と原監督は言う。1区の荒巻朋熙(2年)も「今年のチームは大会新を狙う、ではなかった」。 指揮官が変化を感じたのは12月28日のミーティング。スタッフ陣を含めての全体ミーティングでは「本音8割、奮起を促すのが2割」(原監督)で「準優勝でいい」と伝えた。その後、選手たちで集まったという。「優勝を目指そう」。チームが一つになった。 「駒大と20秒差」を目指した1区の荒巻。区間9位で35秒差だが、「前に追いつけるタイム差で渡せた」。この粘りは、その後の流れを大きく左右する。 “MVP”と言えるのが2区の黒田朝日(2年)。「前半は余裕を持って入って、権太坂からペースを上げるプラン」通りの走り。「集団でも柔軟に対応できた」というように、冷静な走りで区間賞。日本人歴代2位の1時間6分07秒をマークして2位に上がった。 この走りが、続く太田蒼生(3年)への力水となる。「1、2区の後輩がすごく良い位置でもってきてくれた」。駒大からは22秒差。相手は佐藤圭汰(2年)という日本屈指のランナーだが、太田はこの1年、この日のために仕上げてきた。 「僕のところで先頭に立つ」を体現。日本人で初めて1時間を切る59分47秒という驚異的なタイムを叩き出した。ここから、影を踏ますことはなかった。 4区では青学大が誇る“駅伝男”佐藤一世(4年)が激走。「青学大として走る最後のレース。きついところは走れなかった同期のことを思い浮かべて、自然と力が湧いてきました」。 続く5区は2年ぶり出走の若林宏樹(3年)。度重なるケガに泣き、「区間賞争いは難しい。71分台から70分40秒くらいを目指せれば」とスタートしたが、そこは実力者。「前半から飛ばして後半粘れた結果」1時間9分32秒で区間2位。2年前と同じように往路Vのフィニッシュテープを切った。 駒大とは2分38秒差でスタートした復路。「想像以上に身体が動いた」という野村昭夢(3年)が区間2位で山を駆け下りると、7区の山内健登(4年)も区間3位で走る。 コロナ禍で入学した4年生世代。山内は「思い返すと悔しかったですが、その3年間があったからこそ」と言う。走っている最中は、過去3回、先輩を給水していたうれしさと悔しさを思い浮かべていたという。 「山内さんが笑顔で渡してくれたので、やるしかない」。2年生の塩出翔太(2年)は原監督からの電話で「余力を残して」とアドバイスされたそうだが、「青学大らしく」と攻める。「遊行寺の坂でくるしくなって区間記録は出せなかった」と悔しがったが、積極的な走りで勢いを加速。世羅高の先輩・倉本玄太(4年)の元に飛び込んだ。 疲労骨折などを乗り越えて初の箱根に臨んだ倉本。「何とか踏ん張って、いろんな人に支えてもらって立てた。つらかったことがフラッシュバックしましたが、それがきついときにも踏ん張れる要因になりました」。そして、「箱根で走るんだと挫けず、あきらめずにやってきた。腐らずにやってよかった」と胸を張った。 アンカーの宇田川瞬矢(2年)も区間2位で「個人では良くない結果」。そう言えるのも強さの一つ。「少し早いですが、来年の箱根駅伝を見据えています」と語る。 「原メソッドという基本軸がある」と原監督。早大大学院に通い「箱根駅伝メソッド」という論文を発表。「データ化でき、それをベースに個々の能力によってトレーニングメニュー、練習負荷を上げ、下げしてきた」。 春先は5000m、夏合宿を経て秋は10000m。フィジカルトレーニングでもある“青トレ”など、先輩たちが積み上げてきてくれた土台がる。そのうちの一つが、考える力。 塩出の自分の判断を受け、「大きな方向性は示しますが、駅伝はスタートしてから自分の状態を見極めて20数キロ、100%出していく。その能力は日頃からトレーニングを考えているかどうかによって、レースでもできるかどうか。それが駅伝の強さ」と原監督は言う。 駒大との“青紫対決”を制し、至近10年で7度の総合優勝。4年生は3人だけ。記念すべき100回目に、大会新でその名を刻んだ青学大は、次の100年に向かう新時代の旗手として突き進んでいく。
月陸編集部