俳優、シンガーソングライター・中川晃教 磨き続けるハーモニー コロナ禍で中止した「ジャージー・ボーイズ」に強い思い
ミュージカルの舞台でキャパシティー広がる 建て替え工事のため来年2月に休館となるミュージカルの殿堂、帝国劇場(東京都千代田区)。20歳のとき、ミュージカル「モーツァルト!」で初めてその舞台に立った。 「当時は、ことの重大さに気付いていませんでした。夢と歴史が詰まっていて、誰もが目標にする劇場なんだと分かったのは、時がたって僕自身がさまざまな経験を積んでからのことです」 すでに日本有線大賞新人賞を受賞するほどのシンガー・ソングライターではあったが、ミュージカルで舞台に立つとなると、ひと味もふた味も違う。その醍醐味(だいごみ)は想像以上だった。 「ミュージカルでは役としてお芝居で物語を歌います。演じながら歌う面白さを通じて、僕のキャパシティーが広がりました。歌手として過去の名曲を歌う機会に恵まれたとき、歌詞の内容や時代背景などを深く考えるようにもなれたんです」 表現力豊かなパフォーマンスは初舞台の時点で高く評価されていた。ステージ上で抜群の存在感を発揮し、今や日本の演劇界を牽引(けんいん)する存在だ。 「20代からいろいろな作品や音楽と出合ってきて、今の自分があると実感しています」とニコリ。キャリアを積み重ねたことで、伸びやかな歌声に円熟味が加わっている。 「年齢とともに声の出し方が変わってくるので、磨き続けることが目標ですね」 昨年5月には「さよなら中野サンプラザ音楽祭」で、ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」で共演した藤岡正明、東啓介、大山真志とともにコーラスグループ「JBB」を結成してステージに臨んだ。 「ジャージー・ボーイズ」は、フランキー・ヴァリ率いるコーラスグループ「フォー・シーズンズ」の栄枯盛衰を描いた作品。クリント・イーストウッド監督による映画版も大ヒットした。2016年の日本初演から、主人公のヴァリを演じてきた。 20年にはコロナ禍による全公演中止という大きな逆境も経験。緊急事態宣言の解除後にコンサートバージョンで上演されたが、「メンバーそれぞれに『もっとやれたんじゃないか』という悔しさがあったと思います」と振り返る。 「だからこそ、もっとたくさんの人たちに知ってもらい、『ジャージー・ボーイズ』という作品を自分たちが担って成功させていきたいという思いが強くあります」