酒造り文化「五感」で味わって 老舗酒蔵が複合施設開業 カフェに作品展示、蔵人体験も/兵庫・丹波市
創業175年の老舗酒蔵会社、西山酒造場(兵庫県丹波市市島町中竹田)が、カフェやギャラリー、宿泊所などを備えた複合施設「鼓傳(こでん)」をオープンした。酒造りに欠かせない発酵技術を取り入れたメニューや、酒造り体験、同酒造場と縁の深い名だたる文人墨客の貴重な作品などから、酒蔵の文化や技術を「五感」で感じられる。酒蔵と地域、客がつながり、伝統文化を未来に受け継ぐ拠点を目指す。 【写真】蔵人が休憩する「会所場」をイメージした客室 1896年に建てられ、近年は倉庫にしていた木造の酒蔵を改修。当時の水場や仕込み部屋などをイメージし、家具には昭和初期まで使われていた桶などを再利用した。
1階に発酵食を味わえるカフェを整備。メニューは、蔵人が使う社員食堂の栄養士が監修した。発酵食ならではの自然な甘さを生かし、健康的で、優しい味わいを堪能してもらう。 ランチタイムには、酒かすやこうじ、丹波市産の有機野菜などを使ったまかないセットや、ピザやオムライスといった洋風メニューを提供。発酵菓子は、こうじを使ったシュークリームやプリン、クッキーなどがある。日本六古窯の一つ、丹波焼の器で出す。
相性の良い菓子と、日本酒や紅茶を味わう「アフタヌーンティー」を楽しめるユニークなセットも用意している。 体験プランは、蔵人が案内する利き酒講座や、オリジナルの塩、しょうゆこうじを造るワークショップ、蔵見学などがある。事前予約が必要。
2階には、蔵人が休憩する「会所場」をイメージした客室を設けた。宿泊者は実際に酒蔵に入って酒造りを体験できる。近年、酒造りを志す外国人からの問い合わせが増えているという。 また、蔵見学の際に入れるギャラリーでは、俳人高浜虚子や日本画家小川芋銭、美術家綿貫宏介らの絵、俳句といった作品をずらりと並べる。今後、展示作品を変えながら、丹波焼作家や気鋭の学生アーティストらによる作品展も開いていきたいという。
開業のきっかけになったのは、市島町に甚大な被害をもたらした2014年8月の豪雨災害。同酒蔵内にも大量の泥が流入し、廃業も覚悟した。だが連日、多くの人たちがボランティアで泥かきをしてくれたおかげで営業を再開できた。 女将の西山桃子さん(49)は「豪雨をきっかけに『酒蔵の役割は何か』と考えるようになった。この場を通して生まれるつながりが『優しい響き』となって返ってくる。そんな循環を生み出すことが、この地で酒造りをさせていただいている私たちの使命。多くの方々の善意で復興を遂げることができた。地域への恩返しをしたい」と熱を込める。 午前10時―午後5時。火曜定休。
丹波新聞社