【佳子内親王殿下のご印象(ペルーご訪問を終えて)】(全文)
秋篠宮家の二女、佳子さまは、11月1日から10日間の日程で南米ペルーを公式訪問されました。 日本との外交関係樹立150周年を迎えたペルーで、佳子さまは多くの日系人や現地の人々と交流を重ね、聴覚に障害のある子どもたちとは、ペルーで使われている手話で会話されました。 宮内庁が公表したペルー訪問後の佳子さまのご感想全文を紹介します。(表記は宮内庁のまま) 【佳子内親王殿下のご印象(ペルーご訪問を終えて)】 この度、日本とペルー共和国の外交関係樹立150周年に当たり、ペルー共和国政府のお招きでペルーを公式訪間することができましたことを、大変嬉しく思っております。 今回の訪問において、ディナ・ボルアルテ大統領閣下を表敬する機会をいただきましたこと、大統領閣下が催してくださった午餐会で日本とペルーの関係や交流をはじめ多岐にわたる内容について親しくお話させていただきましたこと、大統領閣下をはじめとする関係の方々に大変ご丁寧にお迎えいただき、様々なご配慮をいただきましたことに、心から感謝しております。 この記念の年に関連して、いくつかの行事に出席いたしました。主要行事として外務省トーレタグレ宮にて開催された「歓迎・外交関係樹立150周年記念式典」では、関係する皆様と共に150周年をお祝いし、また、ペル一のマチュピチュと日本の那智の滝が描かれた150周年記念切手のお披露目に同席することができ、感慨深い思いがいたしました。日秘文化会館では、「ペルー日系人協会主催・外交関係樹立150周年記念式典」に出席し、日系の団体の皆様とともに150周年をお祝いすることができ嬉しく思いました。また、「外交関係樹立150周年記念公演」では、ペルーの音楽、日本の音楽や獅子舞による、それぞれのパフォーマンス、両者が融合されたパフォーマンスを楽しみました。 この度の訪問では、日系の方々にお会いしたり、日系の方々に関連する場所を訪れたりする機会が多くありました。「日本人ペルー移住史料館」で、貴重な資料を見せていただきながら説明を伺い、また、「日本人ペルー移住百周年記念碑」に献花をいたしました。日本から移住された方々とそのご子孫が、幾多の困難や哀しみを乗り越え、誠実に、勤勉に、お互いに助け合いながら日々を過ごしてこられたことに、そして、ペルー社会から信頼を得ながら、ペルー社会に貢献してこられたことに改めて思いをいたしました。「日秘文化会館」では、日系一世の方や、日系の団体の方々とお会いし、昔の出来事や思い出、現在の活動についてなど様々なお話を伺ったことが強く心に残っています。「エンマヌエル協会」の「高齢者のための憩いの家」では、そこで暮らすお年寄りの方々とお話し、一緒に「上を向いて歩こう」を歌ったことが、忘れられぬ思い出になっています。また、協会を創設された日系二世の故加藤正美神父の思いやご功績、「診療所」において日本の支援で購入された医療機器が大切に使われていることについても伺いました。同協会が地域の方々の命と生活を守る重要な役割を果たしていることを実感いたしました。「ラ・ウニオン運動場協会」では、創設70周年の式典に出席し、同協会が日系コミュニティの主要な施設のひとつとして長年にわたり大事な役割を果たしていることを感じました。また「ラ・ウニオン学校」では、小学1年生のクラスで日本語で好きな食べ物を答える授業に参加したり、子どもたちが踊りを見せてくださったりして、楽しい時間を過ごしました。「天野プレコロンビアン織物博物館」では、故天野芳太郎氏が収集され、大切に引き継いでこられたプレ・インカ時代からインカ時代にかけての織物や土器等の貴重なコレクションを見学し、モチーフや技術、当時の文化等について伺い、興味深く思いました。「マチュピチュ村」は、福島県大玉村出身で1917年に日本からペルーに渡られた故野内与吉氏が初代村長を務められた村であり、現在の村長から、野内氏のご功績や最近の村の取り組みについて伺いました。また、マチュピチュ村は大玉村と友好都市協定を結んでおり、両村の交流を実感できたことも嬉しいことでした。 ぺルーで暮らす日本の方々や、日本と縁の深い方々にお会いしたり、施設を訪問したりすることもできました。「日・ペルー友好国立障害者リハビリテーションセンター」は、幅広い年齢の患者が社会保険を適用しそれぞれの障害に合わせた治療を受けることができるペルー唯一の国立病院であり、日本も協力しています。リハビリテーションの様子を見学し、説明を伺う中で、質の高いリハビリテーションの普及に向けた強い思いを感じました。「リマ日本人学校」では、小学2年生の国語の授業、小学6年生の算数の授業を見せていただき、合唱や和太鼓の演奏も披露してくださりました。学校生活の様子に触れることができ嬉しく思いました。ペルーから日本に渡り学ばれた経験のあるJICA 帰国研修生同窓会員や文部科学省帰国留学生協会員、また、日本からペルーに渡り活躍していらっしゃる方々やJICAボランティア・専門家とお会いする機会もあり、両国の多岐にわたる交流・協力を喜ばしく思いました。 ペルーの歴史や文化を知るとともに、関係する方々にお話を伺えたことは責重な経験となりました。 「マチュピチュ遺跡」や「サクサイワマン遺跡」、「12角の石」を見学した際には、当時の人々が精密な技術で石を積み上げていたこと、天体の動きに関する高度な知識を持っていたことに改めて感服しました。遺跡を大切に守っていく上で日々積み重ねられている工夫や苦労についてのお話も印象に残っております。また、インカ時代の太陽神殿である「コリカンチャ」や、インカ時代の「ウィラ・コチャ宮殿」の跡の上に建てられた「クスコ大聖堂」を見学できたことは、ペルーの歴史や文化の一端に触れる機会になりました。「クスコ市庁舎」において、歓迎の式典を催してくださったことも、大変ありがたいことでした。 ペルーの技術教育センターやろう学校を訪問し、交流できたことも大切な時間でした。「マリア・アウシリアドーラ生産的技術教育センター」は、元々は女性への技術教育を目的に設立され、現在は性別を問わず様々な技術を教えている場所であり、今回は、「縫製」と「お菓子作り」の授業を見学し、授業内容や工夫している点などを教えていただきました。またその他のコースで作られた作品も見せていただきました。「ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーベン初等特別支援学校」は、リマ市の唯一の公立のろう学校であり、各学年の授業の様子を見せていただきました。先生にサポートしていただきながらペルー手話を交えて交流したり、今回の訪問をきっかけに日本について学んでいる様子を見たりすることができ、嬉しく思いました。いずれの施設においても、生徒が非常に熱心に勉強をしていること、先生やスタッフの方々が強い思いを持って、生徒のため、社会のために意義深い活動をしていらっしゃることが、とても良く伝わってきました。また、歓迎の踊りや歌を披露してくださったことも、素敵な思い出となっています。 この度の訪問を通して、多くの方々が日本とペルーの架け橋になってこられたこと、多岐にわたる分野において両国が深い繋がりを持っていることを感じました。また、日本から移住された方々とそのご子孫の歩みに改めて思いを馳せ、これからもしっかりと心にとどめてまいります。 ペルーでは、それぞれの訪間先の方々、訪問先に集まってくださった方々、沿道等で待ってくださっていた方々など、多くの方々が大変あたたかく、優しく迎えてくださいました。この文書にすべてを書くことは叶いませんが、ひとつひとつの出会いや出来事はどれも心に残る大切なものであり、これからも幾度となく思い出すことと思います。この訪問に際し、力を尽くしてくださり、心を寄せてくださった方々に、改めまして、心から感謝を申し上げます。そして、この150周年を契機として、日本とペルーの友好親善関係がより一層深まることを心から願っております。