三谷幸喜「深津絵里さんはそんな感じでした」“ずっと仕事をしたくなる人”の特徴を語る
TOKYO FMで月曜から木曜の深夜1時に放送の“ラジオの中のBAR”「TOKYO SPEAKEASY」。今回のお客様は、脚本家・三谷幸喜さんと山崎怜奈さん。ここでは、三谷さんが“一緒に仕事を続けたい人”の特徴について語りました。
◆三谷幸喜と通じ合う人の共通点
山崎:三谷さんが求めているものをパッとキャッチして、パッと出せる人って、何が共通しているんですか? 三谷:よく言うのは「僕と共通言語を持っている」ということ。僕もだいぶ経験を重ねているので、だいたいの俳優さんとはコミュニケーションを取れるし、僕のやってほしいことをやってもらうことはできるんだけど、それを1時間かかる人もいれば、5秒でわかってもらえる人もいて。 山崎:その共通言語って何だろうなぁ……同じ作品を観てきているとかですか? 三谷:何だろうね? 通じない人は本当に通じないんですよね(笑)。 山崎:ハハハ(笑)。 三谷:後は感覚ですよ。例えば「ちょっと手でほっぺたをかいてみてください」って言ったときに、僕のイメージは“右手で右のほっぺたをかく”なんだけど、左手でかく人もいるじゃないですか。それはもう共通言語がないから、「ごめんなさい、右手でかいてもらえますか?」って言わなきゃいけない。 山崎:それは“カメラでどこから映されているか”にもよるんですか? 三谷:もっと感覚的なことだと思います。本当に共通言語がある人は、例えば、僕が右手で左のほっぺをかいていることを想像して、「ちょっとほっぺをかいてもらえますか?」って言ったら、ちゃんと右手で左のほっぺをかく人もいるんですよ。深津絵里さんは、そんな感じでしたね。 山崎:え~!? すごい! 三谷:僕と相性がいいのか、もしくはどの監督さんともそうなのかもしれないですけど、監督が望んでいることを雰囲気でなんとなく察するのかな。そういう人はやりやすいです。 逆に、一番やりにくいのは「手でほっぺをかいてもらってもいいですか?」って言ったら「なんで?」っていう人。“なぜこのタイミングでかかなきゃいけないのか?”っていうところから説明しなきゃいけない人もいて、説明すればわかってくれるんですけど時間がかかっちゃう。 山崎:言語化を求められるんだ。とはいえ、三谷さんもロジックの人だから、本当は“ほっぺをかいてほしい理由”っていうのがあるんでしょうけど。 三谷:そうなの。だけど、そのときは、なんとなく“ほっぺを手でかいてほしいな”と思って伝えただけだから、よくよく考えていくと、そこの理由もあるだろうけど、その瞬間は、まだ感覚でしゃべっているから(すぐには)理由が思いつかない。説明するのが面倒くさい……っていうのはありますよね(笑)。 山崎:それをしなくていい人だと楽というか。 三谷:本当に楽。(説明が)5秒で終われば、残りの時間を別のことに使えるし、もっと深く作っていけるじゃないですか。だから、共通言語を持っていると思う人を見つけると、ずっとその人と仕事したくなる。 山崎:(現在公開中の)映画「スオミの話をしよう」は、そういう人がわりと多かったですか? 三谷:ずっと仕事をしている小林隆さんはもちろんそうだし、最近一緒に仕事をしている宮澤エマさんや瀬戸康史さんもすごくやりやすいし、初めて一緒にやった西島秀俊さんとか松坂桃李さんもやりやすかったですね。 (TOKYO FM「TOKYO SPEAKEASY」放送より)