上野の旧「博物館動物園駅」21年ぶり公開 よみがえる“遺構”空間
[映像]旧「博物館動物園駅」一般公開に先立ち行われた報道公開
廃止された京成本線の「博物館動物園駅」が期間限定で一般公開されている。東京・上野にあったこの駅の内部が公開されるのは21年ぶり。ほぼ営業休止当時の状態で残っており、“遺構”空間がよみがえっている。
場所柄、駅舎は荘厳なデザイン
京成電鉄の博物館動物園駅は、1933(昭和8)年に開業。京成上野~日暮里間に位置し、東京帝室博物館(現東京国立博物館)、東京科学博物館(現国立科学博物館)、恩賜上野動物園、東京音楽学校・東京美術学校(現東京芸術大学)の最寄駅として利用された。
上野公園は皇室の御料地だったこともあり、博物館動物園駅の駅舎は国会議事堂のような荘厳なデザインが採用されている。 1972(昭和47)年に上野動物園にパンダが初来園すると、同駅は多くの利用者であふれるようになったが、同駅のホームは4両分しかなく、6両編成の電車は停車できなかった。
そうした事情もあって普通列車も通過するようになり、博物館動物園駅の利用者は減少。また、京成上野駅から約800メートルしか離れていないこともあり、1997(平成9)年には営業休止に追い込まれた。駅休止後も、地元有志やNPO団体を中心に再活用が模索されたが、2004(平成16)年に正式に廃止された。
しかし、2018年に駅舎が東京都選定歴史的建造物に指定された。鉄道建造物が東京都選定歴史的建造物に指定されたのは初めてのことで、これを機に再活用が模索された。そうした経緯を経て、今年11月23日から来年2月24日まで一般公開されることになった。
今回の公開は旧切符売り場まで
今回の公開イベントは台東区や京成電鉄、東京芸大などで組織する上野文化の杜実行委員会が主催。一般公開される部分の通路には、劇作家・羊屋白玉さんや造形作家のサカタアキコさん、国立科学博物館支援研究員の森健人さんたちの作品が展示されている。 同駅の地下壁面には、かつて東京芸大の学生らによってペンギンとゾウのイラストが描かれ、営業休止前には人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」で紹介されたこともあった。
地上部分の駅舎や地下のホームはいまも残っているが、今回公開されるのは、地上から地下ホームまでの階段踊り場に設置されていた切符売り場(現在は撤去)までで、そこから先には入ることはできない。ホームへと通じる階段にはガラス扉が設置されているが、ここには訪問者が記念メッセージを油性ペンなどで描いて残せるようになっている。 (小川裕夫=フリーランスライター)