チョウ激減 猛暑が原因? 観察続ける有識者指摘 長野県中信地域
昆虫が盛んに活動する夏本番を迎えたが、長野県中信地域で長年チョウの観察を続けてきた有識者から「虫が少ない」との指摘が出ている。過去125年で最も暑かった昨年に続き、今年も猛暑傾向となっており、高温が影響している恐れがある。食物連鎖の底辺を支える昆虫界の異変が、生態系全体へ広がらないか注視している。 安曇野市の三郷昆虫クラブ世話人・那須野雅好さん(64)は、4月から40回以上の自然観察会で講師をした。この時季は1回の観察会で20種類はチョウが見つかるが、今年は「10種に届くかどうか」。7月を代表するヒョウモン類がほとんど見られない。松本市のアルプス公園で「山のように見られる」はずのミヤマカラスシジミは、成虫を1匹見ただけだ。 24日は安曇野市の県烏川渓谷緑地で観察会があった。子供たちは楽しそうだったが、チョウは3種しか見つからず、よく見られるはずのヒカゲチョウ類も現れなかった。那須野さんは「種類も数も少ない。経験したことがない事態」と語った。 「種類を問わず何もかも少ない。こんなことはなかった」。那須野さん同様に中学生時代からチョウを追ってきた安曇野市の田淵行男記念館館長・中田信好さん(63)も異変を感じている。普通種のベニシジミ、温暖な地域から移入・定着したツマグロヒョウモンさえ少ない。 2人とも冷涼な高地では多くのチョウを確認しており、高温が要因とみる。暑さを避けて活動の時間帯や期間がずれ、雌雄の出合いが成立しづらい可能性があるという。中田さんは冬場の高温も挙げ「越冬中に目覚めたのに餌となる植物の芽吹きが間に合わず、飢え死にしている恐れもある」と指摘する。 チョウの少なさは、大量の餌を必要とする夏鳥の子育てや、植物の受粉の妨げにつながる恐れがあるという。那須野さんは「生態系の頂点は人間。やがて影響が及ばないか」と心配する。
市民タイムス