三瀬の渡し、再始動 三重・大台町の宮川 9カ月ぶり、保存会が尽力で
昨年、台風で舟流される
三重県多気郡大台町下三瀬から宮川対岸の度会郡大紀町三瀬川までの約50メートルを渡る「三瀬の渡し」の舟が約9カ月ぶりに復活するのを前に、12日午前10時から、大台町の西尾真由子副町長や町教育委員会の福岡佳久教育長、町職員と「大台町ふるさと案内人」のメンバー約10人が仮乗船した。本格始動は、あす14日から。 舟(長さ7.2メートル、幅1.5メートル)を復活させたのは、下三瀬の住民を中心に構成する「三瀬の渡し保存会」(前納俊郎会長、24人)。昨年8月に東海地方を直撃した台風7号で宮川が増水して舟(長さ8.2メートル、幅1.8メートル)が流されてしまい、同12月に大紀町内の工場内に放置されていた樹脂製の舟を譲り受けて、同会のメンバーが整備を続けていた。 この日は天候にも恵まれ、舟に乗ると心地よい風が吹くいい日和。同会のメンバー4人が、船頭や舟のけん引ロープを引っ張る係などに分かれて、ライフジャケットを身に着けた西尾副町長たちを順番に乗船させてゆっくりと川を往復した。舟からは宮川の雄大な自然が間近に迫り、川に流れ出る滝も観察できた。 三瀬の渡しは歩く距離を約6キロ短縮できることから、江戸時代には伊勢詣でから熊野三山に向かう巡礼者が多く利用した。同会の前納会長(77)は「舟を渡す村の人が、御上に対して『野菜を作る暇もない』という陳情を10年おきくらいに出していた」と当時の盛況ぶりを説明した。 体験した西尾副町長は「こんなすてきな場所が大台町にあることをもっと広く知ってほしい。保存会の人の努力があってこそなので、町も盛り上げられるようにしていきたいです」と話した。 同会のメンバーは高齢化しており、ほとんどが本業を持ちながらの兼務。今回の舟の整備も各個人の仕事の合間を縫いながら、少しずつ修繕を続けてきた。前納会長は「舟が流された時は非常にショックだった。渡し場には江戸時代の石畳も残っているので、史跡と渡しの保存の二刀流で頑張っていきたい」と笑顔を浮かべた。 これに合わせてパンフレットも作成し、道の駅奥伊勢おおだい(大台町佐原)や町観光協会(同)などで配布している。 三瀬の渡しは14日から土日を中心に運航する。運賃は3人以上だと1人千円。3人未満は1回3千円。問い合わせは乗船5日前までに。申し込みは町観光協会TEL0598(84)1050へ。