鴻海とシャープ買収契約調印 郭会長「シャープの価格より価値」
鴻海がシャープに3888億円を出資して買収
企業の丸ごと買収による経営再建策を協議してきたシャープと台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が2日午後、大阪府堺市内にある合弁工場で記者会見を開き、鴻海がシャープに3888億円を出資して買収することで合意したと発表、調印した。戦後日本の産業界をけん引してきた大手家電メーカーが、外国企業の傘下に入るのは初めてということもあり、国内や台湾などのメディアが集結。質問もやまず約3時間にわたり会見は続けられた。シャープは鴻海から資金提供を受け、経営再建策に投入。鴻海はシャープの商品企画力を活用し、収益性の向上を狙う。この買収契約成立に伴い、シャープは一定の経営基盤を固めることができたものの、鴻海側の経営判断で不採算部門からの撤退やさらなる人員削減などを余儀なくされる局面も予想され、予断を許さない展開が続きそうだ。
郭鴻海会長「シャープの価格より価値を重視」
記者会見にはシャープの高橋興三社長、鴻海の郭台銘会長が出席。両首脳が調印書に署名して交換した。高橋社長は「新たな戦略的提携を提案してくれた鴻海に感謝したい。提携交渉を通じて、鴻海の交渉のスピードやパワーに圧倒された。鴻海の世界最大の生産能力とシャープの技術開発力の融合を図っていく」と報告。「シャープブランドを継続し、雇用も原則的に維持する。成長分野へ投資してスマートな家電製品を世界に提供することで文化と福祉に貢献し、鴻海シャープグループでアジア発の新しいビジネスモデルを構築したい」と意気込んだ。 郭会長は「今回のシャープとの戦略的提携は買収ではなく、出資投資である。提携交渉に際し、シャープの価格ではなく、将来的な価値を重視した」と、シャープの伝統や将来性を高く評価。「シャープも鴻海もグローバル企業だ。世界がフラット化して顧客も株主も世界中にいる。企業文化の異なる両社が提携することでシナジー効果を生み出せる」と国際的提携の意義を強調した。 さらに郭会長はシャープの人材に対する評価を問われると、「技術や事業の統合ができていないケースがある」と指摘した上で、「複数の分野を見渡せる人材が少ない。近い将来、人事異動もあるだろう。適切な職場で能力を発揮してほしい」と答えた。