「死刑なのに冤罪があり得るという非常に恐ろしい現実」『冤罪学』著者弁護士が語る「袴田事件無罪確定」が持つ“強い意志”とメッセージ
今まさに歴史の転換点にある
――いまも冤罪は多数埋もれているとされてます。今回の判決によって、すぐには警察・検察の体質は変わらないにしても、少しでも冤罪が減るきっかけとなるでしょうか。 西弁護士:死刑なのに冤罪ということがあり得るという非常に恐ろしい現実に、私たちは改めて直面することになりました。司法システムを変えていくためにも、このような冤罪自体に対する認知を広めることが必要です。 アメリカ、イギリス、台湾などの諸外国でも冤罪事件の発覚を契機として、冤罪を防止するための司法システムの改革が進みました。 日本もまさに今、そのような歴史の転換点にいると思います。 再審無罪判決が出ただけで自然に冤罪が減ることはありません。私たちが冤罪を自分ごととして捉え、その再発防止のために司法システムを改善することによって、冤罪を減らし、または冤罪の救済を容易にするような社会を自分たちでつくっていかなければならないと思います。
西 愛礼(にし よしゆき) 2014年一橋大学法学部卒業。 2016年裁判官任官、 千葉地方裁判所において刑事裁判に従事。2019年アンダーソン・毛利・友常法律事務所弁護士 (弁護士職務経験)。2021年裁判官を退官、しんゆう法律事務所弁護士 (大阪弁護士会)。 プレサンス元社長冤罪事件、スナック喧嘩犯人誤認事件などの弁護人を担当。 日本刑法学会、法と心理学会、イノセンスプロジェクト・ジャ パンに所属。 【著者論文 】 「冤罪の構図―プレサンス元社長冤罪事件 (1)~(4)」 季刊刑事弁護 111~114号 (現代人文社、2022~2023年)ほか。
弁護士JP編集部