生クリームと煮詰めると…神戸の地ソース、アレンジ無限 愛好家ら「学会」発足、目指すは全国区
洋食から粉もんまで支えるソース文化を育んだ港町神戸。個性豊かな会社がそろい、多彩な商品を誕生させてきた。今も各社が自慢の味に磨きをかけており、そんな神戸の「地ソース」を愛してやまない人たちもいる。「学会」を組織したり、豊富な品ぞろえで販売したり。「ソースのまち」の応援団として、神戸地ソースを全国区へ押し上げようと知恵を絞っている。(段 貴則) 【写真】とんかつソースで作るホットサラダ ■新たな活用法模索など奮闘 今春、オリバーソース(神戸市中央区)の本社食堂で、ソースを使った料理の試食会が開かれた。 主催は、港町神戸のソース文化を探求する「神戸ソース学会」。神戸のまちや地ソースを愛する人たちの集まりで「神戸地ソースを使った料理メニューを試し、新たな活用法で全国区にしていこう」と企画した。 当日は、料理研究家HITOMIさんが、とんかつソースで作るホットサラダやハッシュドビーフ、どろソースグラタンなど6品を調理。どろソースと生クリームを煮詰めてグラタンソースにしたり、同量の水と合わせてステーキソースを作ったりした。HITOMIさんは「家で総合調味料として手軽に使えるのが発見」と話す。 オリバーの道満龍彦取締役も「新たな可能性を教えてもらった。どろソースを全国へ広げる鍵になる」と期待を寄せる。 ■長田の商店街に「専門店」 お好み焼き店など粉もんの店が集まる長田にある酒販店「ユリヤ」(同市長田区五番町8)。3代目の中島吉隆代表は「いつからかソース専門店だと思われている」と笑うが、店内には神戸地ソースを中心に100アイテム以上がそろう。 ソースの品ぞろえを増やし始めたきっかけは、阪神・淡路大震災。被災し地元を離れた人たちが「神戸のソースじゃないと口に合わない」と、商品を購入したという。 「ソースは神戸のもんやと思うようになった」と中島さん。スパイシーな味が特長といい「甘めのソースでも、スパイスの風味が感じられる。小さい頃から食べていたら、神戸の人の口になる」と話す。 大手セレクトショップ「ビームス」による日本の魅力発信事業とコラボし、ユリヤ監修ソースも商品化した。中島さんは、オシャレなイメージを神戸のA面とするのに対し「『B面の神戸』を象徴する土産物として地ソースを定着させたい」と、神戸6社の商品PRに力を注いでいる。 ■阪神ソース、オリバー…それぞれ特色 「スパイシー」な風味を特徴とし、神戸で早くからソースづくりが行われた背景には、神戸港から輸入される豊富な香辛料の存在があったという。神戸ソース学会によると、現在も市内で6社が生産しているという。 「現存する日本最古のソース会社」という阪神ソース(東灘区)は、創業者安井敬七郎が輸入ソースをベースに、より日本人に合うように研究を重ね、1885(明治18)年に完成させたのが始まりという。さらに英国でソースづくりを学び、神戸に工場を構えて国産ソースの基礎を築いた。 関西で知名度抜群のオリバーソース(中央区)は、日本で最初に「とんかつソース」を誕生させた。お好み焼やたこ焼に濃厚ソースをかける関西の食文化を花開かせた。 また「長田の味」として人気を誇る「ばらソース」など、6社それぞれの特色ある味わいにファンが多い。