自然に治癒しない「トラウマ」の誰にでもできる「画期的治療法」…発達障害と複雑性PTSDの権威が明かす!
あなたは本当にトラウマのことを知っていますか? 自然に治癒することはなく、一生強い「毒性」を放ち、心身を蝕み続けるトラウマ。 【写真】成人の臨床で「発達障害の診断」が明らかに増えている「納得の理由」 講談社現代新書の新刊・杉山登志郎『トラウマ 「こころの傷」をどう癒すか』では、発達障害と複雑性PTSDの第一人者である著者が、「心の複雑骨折」をトラウマを癒やす、安全かつ高い治療効果を持つ画期的な治療法を解説します。 本記事では、TS処理の具体的な手順について説明していきます。治療に用いるパルサーの紹介から、処理の流れを説明します。 ※本記事は杉山登志郎『トラウマ 「こころの傷」をどう癒すか』より抜粋・編集したものです。
現在購入できるパルサー
この原稿を書いている2024年3月の段階で、購入が可能な、治療に用いることができるパルサーは全部で4種類です。図表7-1にそれぞれの特徴をまとめます。 実は、EMDR Kit社製以外は、振動端子に関しては(電圧が違うはずなのに、不思議なことに)全部互換性があります。つまり、テラタッパーの端子でニューロテック社のパルサーも動くし、また逆も動きます。学幸社製のパルサーも振動端子は互換性があります。 クライアントの中には、外来での1クールの治療が終わった後に、パルサーをご自分で買って用いられている方を散見します。
脈診とパルサーの設定
これまであまり明らかにしてこなかった重要な情報があります。それは脈診です。 筆者はパルサーの左右交互刺激の前に必ず脈を測って、そのスピードに合わせてパルサーのスピードを決めています。パルサーのスピードは、安静時の脈ではなく、フラッシュバックの最中の心悸亢進した時の脈の速さに合わせます。治療の場で測ったクライアントの安静時の脈拍数に、20~30を足してパルサーのスピードを設定します。つまり、脈拍が60だったら、左右交互の刺激を1として、パルサーは、毎分80~90回に設定し、脈拍数が70なら、パルサーは、毎分90~100回に設定するのです。 脈診で調べるのは脈拍数だけではありません。筆者は、漢方の3本指での脈診を行っています(図表7-2)(木戸ら、2013)。すると、複雑性PTSDの親も発達性トラウマ症の子も、大多数のクライアントが、「腎」の機能が低下する腎虚(図表7-3は、腎虚を脈診で調べる方法)を示すことに気付きました。腎虚の場合は脈の拍動が弱く、脈診が難しくなるのです。ちなみに「腎」とは、漢方医学で、成長・発育・生殖などにかかわる泌尿器・生殖器・腎臓などの機能を指します。 さらに、子どもでも親でも、トラウマ処理を1セット実施した後に、この脈の状況が大きく改善することにも気付きました。一様に、脈が触診しやすくなり、腎虚のパターンが改善されるのです。筆者は最近では積極的にクライアントに自分の脈を3本指で診てもらい、その脈が改善するのを確認してもらうようにしています。 これは、この一見非常に奇異な、TSプロトコールのトラウマ処理法がからだの深いところにしっかり働いていることをクライアントに知ってもらい、いくらかでも治療へのモチベーションが上がることを意図しています。 ときどき、肝虚(図表7-4)を示す親や子どもに出会います。肝虚とは、漢方医学で、肝臓をはじめとする血を発散(送り巡らす)する機能が低下する状態のことをいいます。このような親や子どもたちを診察した場合は、何か腹を立てていないか、今日の出がけにケンカをしなかったか確認をすると見事に的中します。この場合には、腹同側、腹対側、鎖骨下部と、腹の部位(ここは肝のツボです)に厚く3セットの処理を行うようにします。するとこの数分の処理で肝虚所見も改善します。 脈診はそれ以外にも、肺の所見から、喘息の悪化など実に多くのことを教えてくれます。