オスが「浮気」するのは自然の摂理? 子孫を残すための戦略が男女で異なる、驚きの理由とは【和田秀樹×池田清彦】
サル界でモテるのは「年上、子持ち」のメス
和田 「おばあさん仮説」というのは、他の動物にも当てはまる話ですか? 池田 微妙な質問ですね。野生動物が人間と大きく違うのが寿命だね。ほとんどの動物は閉経や性的能力がなくなると同時に寿命を迎えるから、孫を可愛がる行動などない。 ただ、ゾウやイルカなどの長生きする動物については意見が分かれている。かつて「イルカは孫を可愛がる」という説があったけど、最近の論文では否定されているようだ。 和田 確かに、孫を可愛がる動物なんて聞いたことがありません。 池田 いずれにしても自分の遺伝子を残すという観点でみると、動物のオスとメスではかなり戦略が違っていて、その点では人間も同様だということ。 もちろんその動物に特有の特徴もあって、たとえば人間の世界だと「中年、バツイチ、子持ち」の女性は若い男性からは敬遠されがちな印象があるでしょ? 和田 「熟女好き」の男性もいますが、一般的にはそうですね。子どもが懐いてくれるかどうかわからないし、若い男性からすれば同世代の女性と付き合ったほうがいいと。 池田 それがサルの世界では逆で、「子持ちで年上」のメスがモテるの。子どもを産んだ経験のあるメスは次もちゃんと産める可能性が高いとみなされる。おまけに子育ての実績もあるので、オスにしてみれば、自分の遺伝子を残せる可能性が高い相手として惹かれるわけです。 和田 なるほど、合理的ですね。 池田 だから今の日本社会にある「若い女性ほどモテる」という風潮は、生物学的には理屈に合わないし、あくまで文化的なものにすぎない。若ければ若いほどいいという価値観の人が多いから、若い女にモテて、若い女と付き合うことが男のステータスになる。単純にいうと、周りに自慢できるというだけのことだね。 でも、僕が50代後半の頃か、泊まりがけのフォーラムに仲間の大学教授が女子大生みたいな若い娘を連れてきて「新しいパートナーです」って周囲に紹介したら、みんな羨ましがるよりも「あいつ、どうかしたのか」という感じで、そう自慢できるものでもなかったよ。 第1回〈老いては煩悩に従え! 「不倫バッシング」で日本が衰退するワケ〉ではタテマエばかりが横行する令和ニッポンを憂える医師×生物学者が「オスらしい感性」の重要性について語り尽くしている。 ※新潮新書『オスの本懐』より一部抜粋・再編集。
デイリー新潮編集部
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