ホリエモンは「ウゼェ」とブチ切れ…新幹線の座席リクライニングを倒すとき「後ろへの声かけ」がNGな理由
■鉄道会社は「声かけ」の推奨はしていない 新幹線など列車のリクライニングシート。かつては後ろの人に「倒していいですか？」と声をかけることがグッドマナーとされていました。しかし、時代の流れと現代人の傾向から鑑みるに、今や「声かけ」は不要です。 2018年、「『席を倒していいですか？』とか聞いてきやがる。ウゼェ。勝手に倒せや」と実業家の堀江貴文氏がX(旧ツイッター)で発言し、注目を集めました。新幹線のグリーン車に乗ったときの出来事をつぶやいたもので、堀江氏は後にテレビで「集中しているときに声をかけられるのが嫌」と説明しています。 列車内では彼のように「自分の世界」に没頭している人は少なくありません。仕事をしたり、スマホで動画を見たり、音楽を楽しむ人も多いでしょう。イヤホンをつけている人にわざわざ「倒していいですか？」と聞くのは、「空気の読めない邪魔な人」と捉えられても仕方がありません。 また「トラブル回避のため、なるべく人と関わりたくない」と思う人も増えてきました。物理的にも精神的にもパーソナルスペースを大切にして、知らない人との無用な接触を避けたいのです。「倒していいですか？」「はい」という小さなやりとりでさえ、ストレスを感じる人がいることを知っておきましょう。 では鉄道会社はどのように案内をしているのか。たとえば東海道新幹線の場合、リクライニングの利用について具体的なルールは設定しておらず、「声かけ」の推奨もしていません。後ろの乗客に配慮するように理解と協力を求めている程度です。
■角度は普通車で半分、グリーン車で3分の2ならOK もちろん、声をかけてほしい人は一定数存在します。22年に筆者が主宰する調査サイト・鉄道トレンド総研で「前の人がリクライニングを倒すとき、声をかけてほしいか」を調査したところ、52.3％の人が「声をかけてほしい」と回答しました。その理由を分析すると「突然だと驚くから」「けがを防ぎたい」という人が多くいました。 話を整理しますと、リクライニング時の声かけは今や必要ありません。とはいえ、後ろの人に配慮しない倒し方は、もちろんマナー違反です。テーブルを使用していたり、たまたま足元にある荷物を取っていたら、座席が頭にぶつかり危険です。 一気に倒すのではなく、倒すときは、必ず後ろの様子を確認しましょう。もちろん座席が当たりそうであれば「すみません、倒します」との声かけは必要です。倒されるほうも、公共の交通機関であることを忘れないこと。「座席は無言で倒れてくるものだ」と想定し、心に余裕を持って乗車しましょう。 倒す角度にも配慮が必要です。座席を全部倒すと、後ろの人に圧迫感を与え、不快指数が上がります。「座席がそう設計されているのだから、問題なかろう」と思う気持ちもわかります。しかし、これをしていいのは、後ろに人がいない場合です。「声をかければ、すべて倒していい」とは考えないほうがいいでしょう。 では、どの程度の角度までならいいのか。車両にもよりますが東海道新幹線(N700Sなど)の場合、リクライニングの角度は非公開ですが、普通車ならば半分程度にとどめておくのがよいでしょう。グリーン車は、普通車よりも座席が倒れます。座席の前後の間隔も12センチメートルほど広いので、3分の2程度ならば大丈夫です。 また、倒すスピードも重要です。勢いをつけて倒すと、後ろの人が驚いてしまい、トラブルの原因となります。速度はゆっくりと倒すのがマナーです。理想的なのが「チャー・シュー・メン」のリズム。チャー・シューの2拍でじっくりやさしく座席を倒し、メンで穏やかに停止させましょう。 ※本稿は、雑誌『プレジデント』(2024年10月4日号)の一部を再編集したものです。 ---------- 東 香名子（あずま・かなこ） コラムニスト 鉄道コラムニスト。メディアコンサルタント。外資系企業、編集プロダクション、女性サイト編集長を経て現在フリー。編集長時代、月間アクセス数を650倍に伸ばす。All About旅行ガイド。メディア出演多数。著書に『超ライティング大全ー「バズる記事」にはこの1冊さえあればいい』ほか。 ----------
コラムニスト 東 香名子
