「立ち仕事」中に“座る”のは職務怠慢? 特製イス開発の求人企業の思惑と弁護士の法的見解
立ちっぱなしに法的問題は?
では法律的に、企業側が従業員を立たせっぱなしにすることに問題はないのか。労働問題に詳しい荒木謙人弁護士は次のように解説する。 ーー立ち仕事の場合、こまめに座ることは業務怠慢にあたるのでしょうか。 荒木弁護士:労働者には職務専念義務があり、分かりやすく言えば、仕事中は自分の仕事に集中しなければなりません。 もっとも、立ち仕事の人であっても、体調が優れないときや、肉体的に過酷な業務を行わなければならない場面もありますので、しっかり自分の仕事を進めていれば、座ることが直ちに職務専念義務に違反するとは言えません。 ーー立ちっぱなしがつらい場合に、イスを用意してもらうことは可能なのでしょうか。 荒木弁護士:厚労省が定める労働安全衛生規則615条「立業のためのいす」では、「事業者は、持続的立業に従事する労働者が就業中しばしばすわることのできる機会のあるときは、当該労働者が利用することのできるいすを備えなければならない」と定められています。 そのため、省令上は、立ち仕事をしている労働者が就業中に座る機会があるのであれば、会社はイスを用意しなければなりませんので、イスを用意してほしいとお願いすることは可能な場合があります。 ーー休憩時間をこまめに切り分けるなどうまく調整してもらうことは可能なのでしょうか。もしくは会社はそうした配慮をする義務はあるのでしょうか。 荒木弁護士:労働基準法34条において、労働時間が6時間を超える場合は、少なくとも45分、8時間を超える場合は、少なくとも1時間の休憩を与えなければならないと定められています。そのため、労働が長時間に及ぶ場合には、会社は休憩を与えなければなりません。 また、労働がこのような長時間に及ばない場合であっても、雇用主はパートやアルバイトの人たちに対しても安全配慮義務がありますので、休憩時間を取らせる必要のある場面というのは考えられると思います。 ーー今回のようなプロジェクトを弁護士としてどう思われますか。 荒木弁護士:働いている人たちにとって、より良い労働環境を作るために、とても良い取り組みだと思います。特にパートやアルバイトの方は、職場での立場上、言いづらいことも多いと思いますが、雇用主には安全配慮義務があります。 そのため、特に生命や身体にかかわる重大な事項については、自らの状況をしっかり説明したうえで、要望を伝えていくという心がけも大事だと考えられます。
弁護士JP編集部