野党低迷…地力の差、追い風乗れず<苦闘の行方 衆院選ながさき2024・中>
「与党過半数割れ確実」-。28日午前0時半、長崎県大村市内の選挙事務所。長崎2区で立憲民主党前職の山田勝彦氏(45)が敗れ、比例復活を待つ陣営幹部はテレビの速報に首をかしげた。「こっちと全国とは感覚が違ったのだろうか」 全国的に野党が大幅に議席を増やす中、山田氏は自民党前職に競り負け、比例代表に回った。追い風を感じていた市議は「基礎体力の差で負けた」と肩を落とした。 山田氏は4月の旧3区補選で当選。区割り変更で2区は全有権者数の約7割を旧2区(島原半島、諫早市、西彼2町)が占め、当初からこのエリアへの浸透が課題だった。しかし、自公は組織力で守りを固め、県議や市議、首長も自民前職の支援で動き回った。 結果は旧3区(大村、壱岐、対馬各市)と西彼2町で山田氏が自民前職を上回ったが、島原半島3市で約1万8千票差を付けられて致命傷に。山田氏は地元大村市でも追い上げられる苦しい展開だった。 相手の組織力を上回るには浮動票の取り込みが必要だったが県内の投票率は52・48%と低調。山田氏が選挙戦で訴えた「敵は自民ではなく無関心」が現実となった。陣営は「自民の敵失を自分たちの人気と勘違いしたら、立民の躍進は『にわかブーム』に終わる」と危機感を募らせる。 追い風に乗れず、比例復活も逃した3区はより深刻だ。「ここまで離されると厳しい」。立民元職の末次精一氏(61)は完敗を認めるしかなかった。 陣営の敗因分析は「活動量不足」で一致。1年前の旧4区補選で当選した自民前職が各地域の行事に顔を出しているのに対し、「有権者に直接触れる活動が少なかった」。 公示前に新たな選挙区を細かく回る時間が足りず、集票の要となる労組との関係も十分に深まらなかった。当選した自民前職との得票差は補選時と比べ約3倍に広がった。党公認の衆院選は補選を含めて3回目。小選挙区で連敗し、内部からは「勝てる候補」への転換を求める声がくすぶる。 「全てを懸けた戦い」に敗れた末次氏は、投開票日翌日に佐世保市の街頭に立った。有権者の励ましの声に背中を押され「このままでは終われない。勝つまでやる」。立民からの出馬が前提だが無所属での挑戦も否定しなかった。 千載一遇のチャンスを逃したのは立民だけではない。日本維新の会は初めて県内の全選挙区に候補者を擁立し、解散翌日に馬場伸幸代表が本県入りした。だが公示後は「中央で厳しい戦いを強いられ、党本部からの応援人員が引き揚げた」と維新関係者。2、3区は態勢が整わないまま、立民にも水をあけられて全敗した。 来年夏には全県区で戦う参院選が控える。県総支部幹事長の山田博司氏(54)は候補擁立に関して「不戦敗の選択肢はない」とする。同時に「党本部におんぶに抱っこでは間に合わない」と、県組織の足腰の弱さに焦りもにじませた。