日本政府が「1兆円」を注ぎ込む「あとに退けない一大事業」の勝算は? 事業軌道に乗せるためにも「不可欠な条件」
追加支援を行うと発表
齋藤健・経済産業大臣は先週火曜日(4月2日)の記者会見で、政府・経済産業省が最先端半導体の受託生産を目指すRapidus(ラピダス)に対し、今2024年度中に最大で5900億円の追加支援を行うと発表した。既存の支援額(3300億円)と併せて、政府の同社に対する直接的な支援の規模は1兆円に迫ることになる。 【写真】韓国・文在寅の「引退後の姿」がヤバすぎる…! 手厚い支援の背景には、経済安全保障の観点から半導体のサプライチェーン確立が必要不可欠な状況や、ラピダスが2027年頃の量産を目指している2ナノメートルサイズの半導体が「生成AIや自動運転など日本産業全体の競争力の鍵を握るキーテクノロジーである」(斎藤経産大臣)との問題意識がある。 今回、支援が決定した資金の使途は、従来から取り組んでいる米IBM社やベルギーの研究機関imecとの共同研究、量産化へ向けた製造プロセスのふかぼり、製造装置の購入などに充てる計画だ。また、半導体業界で「後工程」と呼ばれている技術(複数の半導体を1つの基盤に収納するチップレット技術など)の開発など、新たな分野にも充てると説明している。 ただ、今回で政府による支援が終わりということはないはずである。というのは、ラピダス自身も量産開始までに総額で5兆円程度の資金が必要だと認めているからだ。 客観的に見れば、ラピダスは、政府支援の積み増しのほか、民間金融機関からの借り入れ、上場を通じた公募増資や売り出しなど、様々な資金調達を実現できないと、量産の開始前に経営が行き詰まるリスクを抱えているのが実情だ。 そこで、今週は、ラピダスがそうしたハードルを超えるために。何が必要になっているのかを考えてみたい。 かつて日本の半導体産業は世界の市場を席捲したものの、長続きしたとは言い難い。というのは、日本メーカーの半導体部門は、家電メーカー内で従属的な立場にあり、あくまでも自社の家電製品などに組み込む部品としての半導体製造がビジネスの中心で、外販は限定的な副産物という位置づけに過ぎなかったからである。 そして、政治的な激しい日米半導体摩擦の勃発に加えて、半導体の主力市場がPC用のCPUなどに移り代わるという環境の激変もあり、日本企業は揃って、半導体部門の維持に必要な巨額の先行投資に二の足を踏むようになり、衰退の道を辿った経緯があるのだ。