【放射性廃棄物処分】議論の広がりに注目(5月28日)
原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定を巡り、佐賀県玄海町が原発立地自治体として全国で初めて、選定に向けた文献調査を受け入れた。最終処分は東京電力福島第1、第2原発を抱える福島県にとっても重要な問題だ。全国的な議論に広がるのか注目したい。 処分場の選定は、資料に基づく文献調査、地質を調べる概要調査、地下施設での精密調査の3段階で進められ、合わせて約20年かかるとされる。入り口となる文献調査に応じたのは北海道の寿都町と神恵内村の2町村にとどまっていた。玄海町でようやく3例目となる。選択肢を広げるためにも候補地の拡大が引き続き求められる。 玄海町の脇山伸太郎町長は当初、調査に慎重姿勢だった。町議会が「立地自治体の責務」などとして調査に前向きな請願を採択したのを受け、賛成に転じた経緯がある。記者会見では、処分場誘致は別問題との認識を示した上で、「日本のどこかに適地が見つかる呼び水となったらありがたい」と全国的な関心の高まりを期待した。先行きの見えない最終処分場問題に、立地自治体として一石を投じたと言える。
高レベル放射性廃棄物は、原発の使用済み核燃料を再処理する過程で生じる。廃棄物を最終処分できないと、作業が滞り、核燃料が原発敷地内に置き去りになる可能性も否定できない。福島第1、第2原発には現在、計2万体を超える使用済み核燃料が保管されている。 玄海町議会が説く「立地自治体の責務」とは何か。地方に建設された原発は、大都市の電力需要を支えてきた。その時点で責務は果たしており、処分場の誘致は新たな地元負担につながるとの意見は少なくない。処分場選定に関わるのも責務に値するのかどうかは、自治体ごとに受け止めが異なって当然だろう。 処分場の選定は立地自治体だけでなく、原発由来の電気を利用してきた全ての国民の問題でもある。エネルギーを大量に使う大都市部などの消費者の関心も高めていかねばならない。政府と事業者は玄海町が放った「呼び水」を無駄にしないためにも、自らの責任の重さを再確認し、国民の理解醸成に全力を投じる必要がある。(角田守良)