「第三次世界大戦は既に始まっている」世界で度々浮上する指摘、備えておくべきこと
ロシア西部の国境から中国がフィリピンの主権を侵害している海域まで、 今日の戦争と戦争寸前の舞台は、地球上の24のタイムゾーンのうち6つのゾーンにまたがっている。米国大統領選挙では、まったく関心を持たれておらず、両候補とも、拡大する世界的な大混乱を真剣に考えず、認識している形跡もない。 この世界の混乱がバイデン=ハリス政権の評価を決定付けることになろう。そして今年、親プーチンのハンガリー首相は、2度もトランプを訪問した。 * * *
「第三次世界大戦」の定義
ロシアのウクライナ侵攻に関係して、第三次世界大戦は既に開始されているとする驚く警告であるが、同様の指摘は、エマニュエル・トッドが既に22年5月に主張している。この論説は、後から振り返れば14年のロシアによるクリミア併合が始まりであったということになるかもしれないと論じている。 この問題については、まず「第三次世界大戦」の定義を明確にしておくべきであろう。常識的には、米国及びNATOとロシア、中国等が連合して複数の地域で「直接」武力衝突を行うことと定義付けられるのではないかと思う。現段階では、様々な事実がこのような状況に至る可能性を示しているが、断定はできない。 最近の西側プレスには、ロシア、イラン、北朝鮮および中国の4人組が結託して米国に挑戦しているとの論調が見られる。イランや北朝鮮はロシアにミサイル、ドローン、砲弾等を供与し、中国も軍事的利用可能な技術や資材を供与している。しかし、この4カ国の状況は異なり、米国に対する反感を共有して助け合ってはいるが、第三次世界大戦を引き起こしてでも米国に挑むまでは一致していない。 特に、中国は、国際経済の点で他の3カ国と異なり、国内の安定のために経済の活性化が重要で、依然として西側諸国との経済関係を重視する。
常にはらむ〝不測の事態〟
北朝鮮は、6月にロシアとの間で一方が武力侵攻を受けた場合には他方が軍事支援することを定める「包括的戦略パートナーシップ条約」を締結した。その時点では、ロシアは、ウクライナ戦争への条約の適用を否定していたが、最近の北朝鮮からの兵員派遣の動きは、北朝鮮・ロシア間の軍事協力が質的に一段と深化することを示すものだ。 北朝鮮には、朝鮮半島有事の際にロシアの軍事支援を期待するであろう。北朝鮮は、憲法改正で韓国を敵国と定め、韓国からのドローン侵入を非難して南北を結ぶ道路を爆破する等、韓国との緊張を高めている。ただ、当面は、北朝鮮が積極的に韓国と事を構えるメリットが特にあるとは思えない。 以上に鑑みると、現在のウクライナおよびガザ・レバノン以上に戦線を拡大することや、朝鮮半島や台湾で新たにことを起こすことについては自制的な要素もあり、ウクライナ戦争やイスラエル・イラン対立が並行して継続するとしても、米国および中国が直接介入することはなく、いまだ世界大戦に発展することが必然とまでは言えないのではないか。 他方、今後、偶発的な不測の事態が生じ、これが武力行使の連鎖を招く可能性は常にあり得るので、危機的状況における首脳間の意思疎通の仕組みが必要ではないか。
岡崎研究所