「光方式」量子コンピューターで始まる「日本の逆襲」、デモ機から分かったヤバい実力
次世代のコンピューターとして期待されている量子コンピューター。日本でも実用化に向けた研究開発が進められているが、米グーグルやIBMの後塵を拝しているのが現状だ。そんな中、 日本が「逆転」を狙える可能性を秘めていると注目されているのが、2024年11月に理化学研究所や東京大学、NTTなどの共同研究グループが開発した光方式の量子コンピューターである。これは、従来の量子コンピューターとどう違うのか。NTT R&Dフォーラムで展示されたデモ機の取材をもとに解説する。 【詳細な図や写真】NTT研究員が説明をしながらケーブルに触れると、その接触による量子状態の変化がモニターに映し出された(写真:筆者撮影)
新開発の「光方式」量子コンピューターとは?
NTT R&Dフォーラムは、NTTグループや協力団体による最新技術や研究成果を発表するイベントだ。今年は122件の展示が行われたが、その中で、光量子コンピューターの新たな可能性を示した展示があった。 その展示とは、理化学研究所、東京大学、科学技術振興機構(JST)、日本電信電話(NTT)、Fixstars Amplifyの共同研究グループが今年11月に発表した、量子コンピューターの新方式「汎用用型光量子計算プラットフォーム」のデモ機である。 展示ブースで筆者の目に飛び込んできたのは、中心に置かれた一般的な光ファイバーケーブルで接続された装置だ。NTTの研究員いわく、これが光量子コンピューター向け光デバイスの展示だという。 研究員は光ファイバーケーブルに触れ、それを動かしてみせた。すると、リアルタイムに量子状態が変化する様子がモニターに表示される。 「実際にここ(光ファイバーケーブル)を量子の光が通っているからこそ、このような影響が出ているのです」とNTTの研究員は話す。 通常、量子状態は極めて不安定で外乱に弱い。たとえば、現在最も主流となっている量子コンピューターの方式である「超伝導方式」における超伝導量子ビットは、極低温の環境が必要とされる。そのため、一般的な超伝導量子ビットは冷凍機の中に入っており、私たちが目にすることはできない。それに対して、まさに今この瞬間に量子状態がここを通っているということを、この距離で感じることができるのが、この装置の興味深い点だという。